ルート調査中のコクガンが十勝港に飛来 広尾
【広尾】国の天然記念物で渡りのルートを解明中のコクガン2羽が27日、広尾町の十勝港で確認された。ともに背中にGPS(全地球測位システム)発信機を付け、町内の写真家松田哲典さん(60)が撮影に成功した。コクガンの追跡調査を行っているグループの関係者は「非常に貴重な写真」と話している。
コクガンは東アジアでは数が少なく、環境省が絶滅危惧種に指定している。日本に飛来するコクガンの繁殖地や移動ルートなどは不明な点が多く、今回調査している個体はGPS発信機のほか、脚に個体識別番号を付けている。
2羽は識別番号「43」と「A4」。うち「43」は、宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団と南三陸ネイチャーセンター友の会(ともに宮城県)の共同調査グループが1月下旬に同県南三陸町で捕獲し、GPSを取り付けた4羽のうちの1羽。同財団研究室長の嶋田哲郎さん(51)によると、4200キロ離れたロシア北部で夏を過ごし、日本に戻ってきたという。
また、識別番号「A4」は、山階鳥類研究所(千葉県)の澤祐介さんが代表を務めるコクガン共同研究グループが11月、根室管内別海町の野付半島で発信機を取り付けたコクガン。
嶋田さんによると、「43」は11月23日、襟裳岬に到着。その後、十勝港との間を行き来しているという。
撮影した松田さんは、写真仲間が日高管内えりも町でGPSの付いたコクガンを撮影した話を聞き、十勝港へ。全長60センチほどの2羽を発見した。「広尾では初めて見た」と話す。
松田さんは撮影した写真を同財団に提供。嶋田さんは「GPSで場所は特定できるが、写真は生態を把握する上で非常に貴重な資料になる。今後もどのような動向を取るのか注目したい」としている。(松村智裕)