編集余録「ひとり雪遊び」
スコップを持って、自宅近くの雪原に行く。札内川と十勝幌尻岳を望む場所で、半日遊ぶ
▼イグルー(雪のブロックを積んで作る家)にしようかと思ったが、まだ雪がさらさらでブロック作りは無理。ただ穴を掘り、ふわふわ雪のベッドを作ることにした。断熱シートを敷いて横になる。天を見上げれば十勝晴れの青空。雪穴のベッドは、日差しを浴びてぽかぽか暖かい
▼この絶景の場所では、20年ほど前から四季を通じて遊んできた。ここで知り合った仲間たちと、キャンプや川でのカヌーも楽しんだ。地域の子どもたち(障害のある子も)集め、川で事故に遭わないための方法を教えながら、泳いで魚を釣った
▼この5年ほどの間に、仲間たちは病気で次々に他界した。鍛え抜かれた経験豊富な仲間を失い、安全のために子どもの指導もやめた。以来、ひとり遊び。寂しい、わびしい、つまらないとも痛切に思うが、天と地の間に一人を感じるのも悪くはない
▼雪原は静かだ。夏の間は、遠くの国道を走る車の音が聞こえるが、降り積もった雪が騒音を吸い取る。しーんとした静寂の中、耳を澄ますと、川に流れ込む湧き水のサラサラ、ゴボゴボと鳴るかすかな音
▼穴を埋め戻し、家路に就く。十勝の大自然はお金を掛けなくても、遠くに行かなくても味わえる。その幸せな記憶を、仲間たちは私に残してくれた。(横田光俊)
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