編集余録「幸せの記憶」
深いテーマを子どもたちが見事に演じた。帯広児童劇団の設立30周年記念公演「幸せ通り花屋の街角右曲ル」(11月25日・帯広市民文化ホール)に感動した
▼生ピアノ演奏の創作ミュージカル。作曲・編曲・音楽のChiyukiさんが鍵盤に指を下ろした瞬間、約500人の観客は物語に吸い込まれた。小学2年~高校3年の団員が鍛え抜いた歌とダンス、演技で魅了する。出演者が窓枠を手に、動く大道具となる演出も斬新だ
▼「幸せの記憶」がテーマ。孤児院育ちの主人公は大富豪となるが、創業した企業の役員ら(実は異星人)に毒を盛られ川に捨てられる。命からがら再会した孤児院時代の友人は「昔、お前がくれた10セントでコロッケ食べた。幸せだった」と語り、神様と電話ができる「幸せ通り…右曲ル」を共に目指す
▼異星人たちはクッキーで人々を誘い「幸せの記憶」を吸い取る。科学技術の進んだ彼らの星だが「幸せの記憶がないと重力が作れない」からだ
▼幸せの記憶は重い。それがないと星は滅びる。幸せはどこにある。希望という名の船に乗る夢に。街角で出会う人々の思いやりに。実はすぐそばに
▼劇中歌「ハピネス」に涙した。鑑賞後、ロビーで演出・脚本・監督のツジアツロヲさん(辻敦郎帯四中校長)の手を握り「素晴らしかった」。私の幸せの記憶は、劇団のおかげで毎年増える。(横田光俊)