北斗病院、脳科学の専門家鴨原氏着任
社会医療法人北斗(鎌田一理事長)が運営する北斗病院(帯広)の精密医療センター長として6月、鴫原良仁(しぎはら・よしひと)さん(45)が着任した。前任は英ロンドン大学の研究技師(現在は名誉研究員)。磁気で脳の働きを探る「脳磁図(MEG)」を研究し、国内外で技術者、科学者、医師として活躍した脳科学のスペシャリストだ。「患者さんに役立つ『人を幸せにする脳科学』を実現したい」と意気込んでいる。
鴨原さんは大阪府枚方市出身。大阪市立大理学部を経て家電メーカーのエンジニアを2年間務めたが、医師になるため香川大医学部へ。卒業後、大阪市立大の臨床研修センターなどで医療を学びながら脳磁図を研究した。「さらに腕を磨きたい」と2011年に渡英し、ロンドン大の博士研究員、研究技師を務めた。
「世界中の研究者が集まり、腕を磨くには抜群の環境だった」と鴫原さん。ただ、「脳の働きを研究する脳科学者と、脳を診断治療する医療者が、うまくコミュニケーションを取れていない現実があった」とわだかまりを感じていたという。そんな折、日本の恩師に、日本の病院で脳科学の成果を生かすことを提案され、北斗病院の設備の充実ぶりなどを知って帰国を決意した。
鴫原氏の赴任によって新設された精密医療センターは、脳磁図をはじめとするさまざまなデータを統合し、医師の適切な治療を導く“後方支援”が主な役目。現在は、てんかんなど脳外科手術の最適な処置部位の特定などを行っている。
英国では計8施設で脳に関する世界の標準的なデータ集めを進める中、そのメンバーを担っていた。そのため、北斗病院も「9番目の施設」として連携し、脳疾患に関するビッグデータを蓄積する。特に、認知症については「将来的には発症前に、病気を判明させるまでに分析の精度を高めたい」としている。
大の甘党で、小型飛行機の操縦が趣味という点でも「十勝は魅力的」と鴫原さん。新たなフィールドに、「脳科学の成果を医療現場で役立てる環境は世界の中でもそう多くない。北斗病院グループで、医学と科学と工学の融合による精密医療を提供したい」と話している。(松村智裕)