十勝石でかるた制作 芽室の橘さん
【芽室】町北伏古の元農業橘照さん(76)は、黒曜石(十勝石)で百人一首のかるたを製作した。橘さんは「細かい文字をいかに本物に近づけるかが大変だった。1枚1枚、完成していくのが楽しかった」と充実した表情を見せている。
若い頃から黒曜石に興味があった橘さんは8年ほど前、釣りに出掛けた居辺川で黒曜石を見つけ、集めるのに夢中になった。自宅の敷地内には大小さまざまの黒曜石があちこちに積み上げられている。
2年前の4月、居辺川で石を拾っていたところ、「石磨きをやらないか」と誘われて作品を作るように。これまで七福神や十二支、好きな言葉をかたどった置物など100点以上を制作した。
「何か変わったものを作りたい」と思っていた昨年12月、本別町の佐々木利男さんが20年ほど前に黒曜石で作った百人一首を同町に寄贈したとの新聞記事を目にした。本別まで足を運んで佐々木さんに苦労などを聞き、今年1月中旬から制作に取りかかった。
百人一首の木札とほぼ同じ大きさ(縦7・5センチ、横5センチ、厚さ4・5ミリ)に整えた黒曜石に、木札のコピーを貼り付け、カッターで文字を切り抜いて金色に色付けた。カッターの刃は札5、6枚の文字を彫っただけで取り替えなければならなかった。
2月末に100枚が完成。制作期間中は「これしかやっていなかった。目と手が疲れて手に力が入らなくなった」と振り返る。妻セツ子さん(74)も「根気がある」と感心する。
100枚の重さは約6キロで、特注の額に入れて自宅に飾っている。黒く光る黒曜石に金色の文字がよく映える。セツ子さんのリクエストに応え、3月には5分の3の大きさのミニチュア版も2セット完成させた。
現在は木札と同じ大きさの札を制作中。「文字を金と銀の交互にしようかと考えている。今後も細々とやっていきたい」と話している。(澤村真理子)