LGBTに理解を 28日に帯広で当事者講演会
同性愛などの性的少数者「LGBT」への理解を深めてもらおうと、十勝管内の当事者らが活動を進めている。28日にはとかちプラザで講演会を開き、ゲイや性同一性障害の当事者が体験や悩みを語る。主催者側は「地方都市では特に、LGBTには触れていけないとの雰囲気がある。タブー視せず、きちんと話ができる環境が整うきっかけにしたい」としている。
「職場や周囲にカミングアウトできない。リスクが大きいから」。ゲイの当事者で、十勝管内で教職に就く40代の男性はこう吐露する。道内で性的少数者を支援する「コミュニティセンター・にじいろほっかいどう」の事務局長として「国見亮佑」の名前で活動しており、28日の講演会も企画した。
国見さんは、周囲に打ち明けることで差別され、仲の良かった同僚が離れていくのではとの恐さを拭えない。ゲイであることは、両親やLGBTの仲間など限られた人にしか伝えていない。人口に占めるLGBTの割合は5~10%とされ、広告代理店・電通の2015年調査では7・6%と算出。「十勝にもたくさんいる。だが、当事者が声を上げづらく、存在が分からないのが大きな問題」(国見さん)と指摘する。
国見さん自身、もどかしさを感じている。生徒の保護者の間で、国見さんがゲイではないかとのうわさが広まった。「でも、面と向かって誰も聞いてこない。聞いてくれれば、『そうです』と説明するのに」
「2人の関係を証明するものがない」。40代男性のパートナーと同居する国見さんは不安を口にする。病気や事故で緊急入院した際は、親族でないため面会できない可能性も。死亡時は2人で築いた財産も相続できない。緊急連絡先はパートナーでなく、本州の実家に。「法律上は他人でしかない」と不満が募る。
LGBTを取り巻く環境は、変化の兆しを見せている。2015年の東京都渋谷区を皮切りに、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」は全国で4自治体が発行。LGBT差別解消へ、各政党は法整備の検討を始めている。
国見さんは十勝の各市町村でもパートナーシップ証明書を発行してほしいと願い、「LGBTがいるという前提で社会の制度設計を進めてほしい。パートナーがいて幸せだが、それを分かってもらえないのは苦しい。自分らしく生きていきたい」と話す。(池谷智仁)
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28日の講演会は「LGBTってなに? とかち・くしろの当事者たちの講演会」と題し、午後1時半から同4時まで開かれる。国見さんの他、性同一性障害の当事者2人が実情を話す。資料代として500円が必要。事前の申し込み不要。問い合わせは国見さん(080・5583・2642)へ。
レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害など)の英語の頭文字を取った呼び方。