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大型の歯のあるヒゲクジラ、国際的学術雑誌に論文掲載 足寄

足寄で発見され、研究の発端となった「歯のあるヒゲクジラ」の
化石を持つ安藤さん

 【足寄】足寄動物化石博物館(澤村寛館長)の副館長で学芸員の安藤達郎さん(45)が、町内で発見された2500万年前のクジラの化石が「歯のあるヒゲクジラ類」に属し、同時期に生息していた同じ種類の個体に比べ2倍の推定体長8メートルだったとする研究論文をまとめた。30日の日本古生物学会(京都市)で発表する。歯のあるヒゲクジラの多様性を示す内容で、「豊富な化石が発見されている足寄だからこその研究成果」(安藤さん)と話している。

 研究の発端となった大型のクジラ化石は、1982年、町茂螺湾の茂螺湾川沿いに分布する茂螺湾層で発見された。左側頭部の一部で大きさは最長約30センチ。化石が発見された茂螺湾層は後期漸新世(2800万年~2300万年前)の地層で、同地層からはアショロアやベヘモトプスなどの束柱類(デスモスチルスの仲間)、クジラ類の化石が数多く発見されている。

 大型のクジラ化石の側頭部の骨の形状が、既に町内で発見されている歯のあるヒゲクジラ・ヤブキモラワンクジラの側頭部と類似していることから、歯のあるヒゲクジラの化石であることが判明。骨の頬の部分の大きさを同類の他の化石と比較した結果、頭骨の長さが約1・2メートル、体長は約8メートルと推計された。

 これまでの通説では、歯のあるヒゲクジラ類は原始的なクジラの生き残りで、細々と生きていたと考えられてきた。研究の意義について安藤さんは「大小さまざまなクジラが存在し、高い多様性を持ち、繁栄していたことが示された。当時の海洋生態系で重要な位置を占めていたことが分かった」と話す。

 研究論文は台湾の古生物学者蔡政修氏(32)との共著。2014年暮れに執筆に着手し、昨年3月に書き上げた。既に電子版が公開されている他、国際的な学術雑誌「Journal of Mammalian Evolution」(邦訳・ほ乳類の進化誌)への掲載も決まっている。安藤さんは「肯定的な見方が多く、研究結果は受け入れられていると思う」としている。(鈴木裕之)

 歯のあるヒゲクジラ 歯を持っていた原始的なムカシクジラから、歯を持たず、「クジラヒゲ」と呼ばれる角質の採餌器官を持つ現生型のヒゲクジラに進化する過程の中間的なクジラ。3400万年~2300万年前に世界中に生息したが、後期漸新世に生息していた種類の多くは体長3~4メートルの小型の化石しか見つかっていない。

関連写真

  • 体長8メートルの「歯のあるヒゲクジラ」の生体復元画(下)。上はヤブキモラワンクジラ((c)新村達也&足寄動物化石博物館館)

    体長8メートルの「歯のあるヒゲクジラ」の生体復元画(下)。上はヤブキモラワンクジラ((c)新村達也&足寄動物化石博物館館)

  • クジラの生体復元画((c)新村達也&足寄動物化石博物館館)

    クジラの生体復元画((c)新村達也&足寄動物化石博物館館)

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