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高木菜リンク新で総合初V、師円日本新全日本スケート

【女子5000メートル】種目3つ目の金メダルを手に喜ぶ高木菜那(中央)、左は2位の藤村祥子、右は3位の菊池彩花

 スピードスケートの第82回全日本選手権(日本スケート連盟主催)最終日は21日、明治北海道十勝オーバルで男女4種目を行い、女子は高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)が4種目総合164・410の大会新記録、リンク新記録で初優勝した。高木は最終日の1500、5000メートル両種目で1位となるなど、4種目中3種目を制する強さを見せた。最終5000メートルで4位となった妹の美帆(日体大-帯南商高出)は、166・569で総合2位に食い込んだ。藤村祥子(宝来中央歯科)は最終5000メートルで2位となり総合は5位。十勝関係の男子総合は、最終1万メートルで2位となった小川拓朗(帯広連盟)が8位から浮上し、3位となったのが最高。ウィリアムソン師円(日本電産サンキョー)が平子裕基(当時白樺学園高)の日本記録を14シーズンぶりに破る153・163で初制覇したほか、一戸誠太郎(信州大)も同2位に入るなど、高卒1年目の3人が表彰台を独占した。(岡部彰広、折原徹也)

妹に負けたくない 菜那
 「帯広での大会だったし、親にも優勝を見せられてよかった」。日本のオールラウンド新女王に輝いたのは、今季躍進中の高木菜那。155センチと小さな体ながら、笑顔とともに優勝杯を手にした姿に貫禄を漂わせた。

 初日に公言した最終日の2種目制覇を有言実行した。1500メートルでは妹・美帆と同じ組で滑走し、終盤に引き離して快勝した。「同組で滑って勝ったことがなかったので、負けたくない気持ちがあった。自信はあったが、美帆も調子が上がっていたので…。勝ててよかった」。前日に厳しい口調で評価した今村俊明監督も「300メートルから700メートルのラップタイムが29秒台でなければ前が見えてこない。世界は28秒だが、まずはクリアしたのでまずまず」と軟化。タイムは菊池彩花(富士急)の国内最高記録に迫る1分58秒台半ばに突入、W杯帯広大会の自己記録を上回った。

 中距離系が得意ながら、5000メートルでもオランダ修行の成果を発揮した。先に滑った藤村祥子(宝来中央歯科)の好タイムに不安を抱きながらも、後半に1度1周35秒台に落としただけで34秒台を保った。「(練習拠点の)オランダで10分走とかをたくさんやってきたので、頑張れると思っていた」と胸を張った。

 ワンランクアップへ向けてもがき続ける妹が総合2位に入り、姉としても記念すべき大会となったが、優勝杯を手にした瞬間にもう過去のこととなった。「次の(全日本)スプリントの1500メートルで大事なスピードがどう出せるか試したい。今季に日本記録を出すのが目標。あしたから次の課題を持って練習に取り組みたい」と宣言した。

優勝杯を受け取る男子総合日本新Vのウィリアムソン師円

師円 男子総合日本新 最後は意地で頑張れた
 ウィリアムソン師円は2位の一戸誠太郎に30秒余りのマージンを得て迎えた最終1万メートルで当初の「総合優勝が取れればいい」から「日本記録更新」に目標を変えた。14分9秒がそのリミット。公式戦滑走わずか2回目の同距離はまだ力の出し方が分からず、同走の一戸誠太郎(信州大)にもだんだん引き離されていったが、軽くクリア。「一から気合を入れて臨めた。最後は意地で頑張れた」と自画自賛した。

 ただ今村俊明監督は「日本(のスケート界)は瀕死(ひんし)の状態。過去最低レベル」と大きな危機感を抱いているだけに注文は多い。「1500メートルは絶対に勝たなくてはいけなかったし、1万は負けるにしても残り2周まで頑張る姿が見たかった。そこがまだまだ弱いところかな」。師円も分かっている。「W杯では、日本を背負うにはふさわしくない結果だったし、もう一度スケーティングを見直す」。

 今回は1500メートルで競り負けた一戸誠太郎(信州大)、1万メートル日本記録保持者の小川拓朗(帯広連盟)の同期3人で表彰台に上った。互いに勝ったり負けたりの状態は望むところだ。その先には男子の総合連覇記録「6」の更新と、目標とする“世界で通用する選手”の姿が見えてくる。

【男子1万メートル】初日不調も最後の種目で2位と存在感を見せた小川拓朗。総合も3位に食い込んだ

小川男子総合3位 同期の存在刺激 得意種目で奮闘
 小川拓朗が、最も得意とする最終1万メートルで2位と奮闘。「前日がボロボロだったのできょうは吹っ切れていた。最後(の1万メートル)まで残れると思わなかったので、巻き返せてよかった」と声を弾ませた。

 W杯最終戦から帰国してすぐの大会だったこともあり、調整に失敗した。1日目終了後に睡眠をしっかり取って体調を整えたこともあり、この日最初の1500メートルで滑りの感覚を取り戻し、1万につなげた。

 優勝した一戸誠太郎(信州大)の後半の速いラップタイムに敬意を抱いたが、同時に闘争心に火がついた。「師円の力が抜けているが誠太郎が盛り返してきた。2人に置いていかれないようにしなければ。とにかく長距離が弱い日本をどこかで打開しなくてはならない」と同期2人の存在を大きな刺激にした。

女子総合初制覇に笑顔のの高木菜那(左)。隣は妹美帆

競り合い好結果に W杯後半戦で試す 美帆
 総合2位の結果にも高木美帆の表情が緩むことはなかった。

 思った滑りができない今シーズンだが、今大会は1500メートルで姉・菜那、5000メートルで田畑真紀(ダイチ)と同走で競り合えたことが好結果につながったと分析。しかし「自分でいいレースができたと思っても、差がついた」と冷静に振り返った。

 今季のW杯前半戦は1000メートルのみの出場だったが、今回の成績で、後半初戦のハーマル(ノルウェー)で念願の1500メートルと3000メートルへの出場が決まった。「後半戦もつまずくことがあると思う。でも(次の五輪の)平昌へ向け大きく変わるために、いろんなことを試していきたい」と不安を抱えながらもいつもの前向きな姿勢を見せていた。

最終種目で2位 復調確認し安堵 藤村
 ソチ五輪代表の藤村祥子が、最後の5000メートルで今大会唯一の表彰台となる2位に食い込んだ。不調を脱して結果を残したまな弟子に、小竹直喜監督は「やっぱり強いね」と笑顔を見せた。

 総合成績では500メートルでついた大差は埋めがたく、初日7位から5位への浮上にとどまったが、大会を通して復調を確認できたことに安堵(あんど)した。1週間前のW杯ヘーレンフェイン大会3000メートルAクラスで最下位の16位。「フォームもスピードも駄目。前に進まなかった」。帰国後に小竹監督の下での調整でほぼ回復。「5000メートルは抑えすぎたが、いろいろと考えながら滑ることができた」と余裕もあった。

 次の国際大会は、来年1月末のW杯。「年内に新しいことに取り組みたい」と意気込みを示した。


(21日、7位以下関係分)
【男子】
▽1500メートル
(カルテット)
世界記録  シャニー・デービス(米国)1分41秒04
日本記録  中村 奨太(ロジネットジャパン)1分44秒99
国内最高  杉森 輝大(吉羽木材)1分47秒49
リンク記録 キヨルド・ヌイシュ(オランダ)1分45秒97

(1)一戸誠太郎(信州大)1分48秒15
(2)ウィリアムソン師円(日本電産サンキョー)1・48・26
(3)近藤 太郎(専大)1・50・14
(4)今野 陽太(開西病院)1・50・18
(5)中村 奨太(ロジネットジャパン)1・50・87
(6)渡部 知也(日体大-池田高出)1・51・20
(7)居城和樹(信州大-帯南商高出)1・51・50
(9)小川拓朗(帯広連盟)1・51・85
(11)小川翔也(専大-池田高出)1・52・13
(14)横山碧生(山形中央高-池田中出)1・54・11
(21)山澤諒(大東大-池田高出)1・54・93
(23)小坂龍(専大-白樺学園高出)1・55・52
(27)千葉将志(明大-白樺学園高出)1・57・03

▽1万メートル(カルテット)
世界記録  スベン・クラマー(オランダ)12分41秒69
日本記録  小川 拓朗(白樺学園高)13分18秒30
国内最高  小川 拓朗(白樺学園高)13分31秒34
リンク記録 李 承勲(韓国)13分21秒04

(1)一戸誠太郎(信州大)13分48秒05
(2)小川 拓朗(帯広連盟)13・53・67
(3)ウィリアムソン師円(日本電産サンキョー)13・53・93
(4)帰山 雄太(水戸開研)14・5・02
(5)小川 翔也(専大-池田高出)14・13・74
(6)土屋 良輔(専大)14・13・99
(8)渡部知也(日体大-池田高出)14・49・13

▽4種目総合(最終成績)
世界記録  シャニー・デービス(米国)145.742
日本記録  平子 裕基(白樺学園高)153.918
大会記録  白幡 圭史(コクド)155.236
リンク記録 李  承勲(韓国)152.940

(1)ウィリアムソン師円(日本電産サンキョー)153.163=日本新、大会新
(2)一戸誠太郎(信州大)154.393
(3)小川 拓朗(帯広連盟)158.543
(4)小川 翔也(専大-池田高出)158.592
(5)渡部 知也(日体大-池田高出)158.836
(6)中村 奨太(ロジネットジャパン)158.975

【女子】
▽5000メートル
(カルテット)
世界記録  マルティナ・サブリコバ(チェコ)6分42秒66
日本記録  石野枝里子(日本電産サンキョー)6分55秒07
国内最高  穂積 雅子(ダイチ)7分5秒17
リンク記録 穂積 雅子(ダイチ)7分7秒56

(1)高木 菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)7分13秒66
(2)藤村 祥子(宝来中央歯科)7・14・05
(3)菊池 彩花(富士急)7・21・09
(4)高木 美帆(日体大-帯南商高出)7・25・64
(5)松岡 芙蓉(富士急)7・28・73
(6)田畑 真紀(ダイチ)7・28・76
(7)押切美沙紀(富士急-駒大苫小牧高、中札内中出)7・31・69

▽4種目総合(最終成績)
世界記録  シンディー・クラッセン(カナダ)154.580
日本記録  田畑 真紀(ダイチ)160.480
大会記録  穂積 雅子(ダイチ)165.421
リンク記録 穂積 雅子(ダイチ)165.895

(1)高木 菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)164.410=大会新、リンク新
(2)高木 美帆(日体大-帯南商高出)166.569
(3)菊池 彩花(富士急)166.583
(4)田畑 真紀(ダイチ)168.151
(5)藤村 祥子(宝来中央歯科)168.200
(6)樋  沙織(日本電産サンキョー)169.385
(7)押切美沙紀(富士急-駒大苫小牧高、中札内中出)169.410




【女子5000メートル】最終種目も快勝、3種目制覇での総合初優勝を決めた高木菜那

高木菜ら十勝 6選手を選出 日本代表
 日本スケート連盟は21日、今季の国際大会後半戦3大会の日本代表を発表した。日本の女子1枠しかまだ決まっていない世界オールラウンド選手権(来年3月7、8日、カナダ・カルガリー)には高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)が選ばれた。同選手権はワールドカップ第5戦終了後に日本の出場枠が追加された場合、代表選手を追加する。

 そのほかの大会の選出選手は次の通り。

◇アジア距離別選手権(同1月10、11日、中国・長春)
▽男子=小川拓朗(帯広連盟)石川将之(山梨・北杜高)
▽女子=松岡芙蓉(富士急)辻本有沙(信州大-白樺学園高出)

◇ワールドカップ第5戦ハーマル大会(同1月31日、2月1日・ノルウェー)
▽男子=ウィリアムソン師円(日本電産サンキョー)一戸誠太郎(信州大)渡部知也(日体大-池田高出)土屋良輔(専大)
▽女子=高木菜那(日本電産サンキョー-帯南商高出)菊池彩花(富士急)高木美帆(日体大-帯南商高出)藤村祥子(宝来中央歯科)田畑真紀(ダイチ)

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