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焼き鳥専門店「とりせい」新店舗オープンへ 池田

「とりせい」の現店舗の最後を惜しむ松下さん夫妻と長男の敏さん。手間の炉で41年にわたって焼き鳥を焼き続けた

 【池田】町内の有名焼き鳥専門店「とりせい」(松下誠さん経営)の新店舗が現店舗の近くの東1条に完成し、16日のオープンが決まった。同店は1973年に開店、店の入る建物は80年以上も前に建てられ、親しみやすい店の雰囲気と焼き鳥の味の良さは41年にわたって支持されてきた。松下さんは「この店と別れるのは寂しいが、やむを得ない」と話している。現店舗での営業は9日が最後で建物は年内に解体される。

 松下さん(69)は清水町出身。高校卒業後、プリマハムに就職し、札幌、室蘭で営業の業務で働き退職。新得でタクシー運転手を務めながら自営の道を探り、友人の勧めで焼き鳥店を開業した。池田で店を構えたのは、当時、町内に焼き鳥店がなかったため。

 店の建物は、入居前は住宅や時計店、毛糸店、編み物学院、居酒屋などに使われてきた。1階はカウンターと小上がり、座敷は1、2階にあった。開店から8年ほどは一家が2階で生活した。傾いた床、狭い厨房(ちゅうぼう)、急な階段と使い勝手は悪く、冬は外壁にビニールを張って寒さをしのいだ。

 しかし、店は旧国鉄や林務署、森林組合などの職員らがよく利用し、午前2、3時まで客は途切れなかった。炉の炭は本郷林業(池田)から購入。火力の強いイタヤの炭で焼いた鶏肉は味が良く、若鶏の首の「ソロバン」、鶏皮の「ボンボジ」、素揚げの鶏の空揚げなどが人気を集めた。十勝ワインのロゼに焼酎を混ぜる飲み方は同店の客が始めたものだ。

 松下さんは「池田は労働者のまちでメーデーになると店が忙しくなった。ライバル店が池田に進出した際には旧機関区の職員らが応援してくれた」と振り返る。バンド「ドリームズ・カム・トゥルー」のボーカル吉田美和さん(池田出身)も来店し、今も帰省すると注文の電話が入る。

 時代を感じさせる店の雰囲気は客の心を引き付け、「この店が好きだ」という声もあり、松下さんは新店舗の建設に二の足を踏んでいた。ただ建物の老朽化は著しく、1年ほど前から後継者で長男の敏(さとし)さん(42)と検討してきた。

 敏さんは先月伴侶となったひとみさん(40)と共に、新しい店の経営に両親と一緒に乗り出す。松下さんの妻美喜子さん(65)は「40年前と比べ池田の人口は半減し、不安もあるが、息子がやる気だから」とエールを送っている。(平野明)

関連写真

  • 築80年以上とされる「とりせい」が入る建物

    築80年以上とされる「とりせい」が入る建物

  • 「とりせい」の現店舗の最後を惜しむ松下さん夫婦。左は長男の敏さん。手前の炉41年にわたって焼き鳥を焼き続けた

    「とりせい」の現店舗の最後を惜しむ松下さん夫婦。左は長男の敏さん。手前の炉41年にわたって焼き鳥を焼き続けた

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