太陽光「土砂」リスクも 音更で隣接農地に流入
小規模は環境評価対象外
【音更】音更町十勝川温泉の傾斜地にある敷地から、隣接する農地に土砂が流入する被害が確認された太陽光発電。山林や傾斜地に設置する際、環境評価とともに、十分な対策を行わなければ大雨で土砂被害が発生するリスクが指摘され、今回の設備(出力1300キロワット)周辺では消防署員が土のう積みに出動する一幕もあった。道では2万キロワットより小さい太陽光発電は環境影響評価の対象になっておらず、こうした点も被害の要因につながったとみられる。今後、再生可能エネルギー設備の建設をどのように進めるかは、知事がポストコロナの成長戦略に位置付ける「ゼロカーボン北海道」にも課題を突き付ける。
「太陽光発電の隣接地から農地へと雨水や土砂が流入し、被害が出ている。農業者らへの救済措置をどう考えているのか」。6月22日、定例道議会の一般質問で、民主・道民連合の小泉真志氏(十勝区)が鈴木直道知事に迫った。音更町十勝川温泉6に昨年設置されたばかりの太陽光発電施設と、すぐそばにある農地。そこでビートなどを育てる40代の農業男性が、大雨のたびに土砂で苗が流されるなどの被害を受けた。
問題は、環境評価にしても、万一被害が発生した際の補償にしても、現状は設備の大小を問わずに適用できる法的なルールがないこと。
ただ、鈴木知事は「国や関係機関と連携し、事業者が環境に配慮し、適切に太陽光発電等の事業を実施するよう促したい」と答えるにとどまる。音更町は農業者らの窮状を聞き、企業側に対策を求めたが、「法的な根拠もなく対応に苦慮している」(経済部)と困惑する。
道の推進策 対応不可欠
道は2050年までに、道内の温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す「ゼロカーボン北海道」の目標を掲げている。コロナ禍で打撃を受けた道内経済の新たな柱に位置付け、従来の中核産業である「食と観光」に「エネルギー」をプラスして経済再生を果たす構えだ。将来的には、道内で生産した再生可能エネルギーを本州に供給することも念頭にある。
太陽光発電は有効な手段の一つで、中長期的に道内で設置が計画される可能性がある。ただ、現在は国も道も、太陽光発電の設置に必要な環境評価の対象を大規模施設のみとしている。
今後、ゼロカーボン北海道が本格化する中で、発電設備の設置ラッシュなどが起きれば、道内の豊かな自然や先人が切り開いた農業基盤が損なわれるリスクもある。戦略の推進には、十分な議論とともに、道内の自然環境と既存の産業基盤を守るルールの整備が求められる。(奥野秀康、内形勝也)
光エネルギーを電気に変換する。「宅地」のほか「雑種地」「原野」「山林」などに設置可能で、農地転用も可能とされる。再生可能エネルギーの代表格とされるが、設置工事に合わせて山林や傾斜地などを切り開く際、土壌の保水力が失われて土砂流出が起きやすくなるとの指摘もあり、全国では建設に反対する運動が起きているケースもある。