エチレンでたまねぎ長持ち
道総研 花・野菜技術センター 研究部 生産技術グループ
1.背景と目的
たまねぎの輸入代替推進が近年求められているが、長期貯蔵中に発根萌芽などによる歩留まりの低下が問題となっている。また、加工業務用途においては加工作業の平準化などもあり、長期安定供給が求められている。貯蔵庫内へのエチレン処理による貯蔵期間延長技術は馬鈴しょなどで実用化されており、たまねぎでの適用可能性が期待される。
そこで本試験では、たまねぎの安定供給に向けて、各種エチレン処理法を検討し、貯蔵期間延長技術を開発することを目指した。
2.試験の方法
1)エチレン処理による長期貯蔵技術の開発
エチレン処理がたまねぎの貯蔵性に与える影響を明らかにする 。
試験項目等:品種 ;「ゆめせんか」「すらりっぷ」「北もみじ2000」「オホーツク222(直播)」「北もみじ2000(直播)」(直播は北見農試産)、エチレン処理 ; 目標値0, 5, 10 , 15 , 20(19年度のみ)ppm、貯蔵期間 ・ 条件 ;11月下旬~翌8月3℃湿度50%。調査項目 ; 健全球率(茎盤突出等による変形 、 発根 、 萌芽のない球の割合)、 内部萌芽長割合(内部萌芽長 / 球高)。 調査時期 ; 毎月中旬に調査
※本試験における評価基準:内部萌芽は加工の際に問題となる。その許容範囲は業者、製品などにより一定しないが、萌芽伸長していないほど良いとされる。ここでは入庫時の内部萌芽長割合が概ね20〜30%であることから30% を芽の動きが始まった目安として、50% 未満を使用できる限界として、それぞれ本試験での基準とした。また、健全球率については95%、90% を本試験での基準として評価した。
2)エチレン貯蔵終了後のタマネギ品質変化の解析
エチレン処理の有無と出庫後の温度条件が品質変化に及ぼす影響を明らかにする。
試験項目等:貯蔵終了後(出庫)から14日間、低温および室温で保管し健全球率 、 内部萌芽長割合を調査。供試品種;「北もみじ2000」
3.成果の概要
1)庫内エチレン5~20ppm の処理により「北もみじ2000」において翌8月(最終)調査時の内部萌芽の伸長が抑制された(図1)。いずれの濃度でも内部萌芽長割合30% を越えたが、5ppm 以上であれば一定の効果が見られたものの5、10ppm では年次により効果が劣る場合があった。一方、15ppm では年次変動が少なく安定した効果が見られたことから、本試験ではエチレン濃度は15ppm を推奨する。
2)庫内エチレン15ppm の処理により、直播、移植ともに「北もみじ2000」の健全球率の低下および内部萌芽長割合の増加は遅延した(図2)。その傾向は直播か移植かにかかわらず同様の効果が認められ、エチレン処理方法は直播か移植かによる変更の必要はないと判断した。
3)庫内エチレン15ppm の処理により各品種の健全球率の低下は、3カ年の平均で0ppm に比べ2ヶ月以上遅延し、「北もみじ2000」は7月下旬、「ゆめせんか」は6月下旬、「すらりっぷ」「オホーツク222」は5月下旬まで健全球率95% 以上を保った(表1)。内部萌芽長割合も15ppm エチレン処理により増加が概ね2ヶ月程度遅延し、2~3カ年の平均で「北もみじ2000」は7月上旬、「ゆめせんか」は4月上旬 、「すらりっぷ」は3月下旬、「オホーツク222」は7月中旬まで30%以下を保った。また「すらりっぷ」は7月上旬まで、「北もみじ2000」「ゆめせんか」「オホーツク222」は8月の最終調査まで内部萌芽長割合50% 未満を保った。これらよりエチレン処理による品質保持効果はいずれの品種でも有効と判断した。
4)出庫後の品質変化にエチレンの影響は見られなかった(表2)。
4.留意点
1)本成果はエチレンを用いたまねぎの貯蔵・出荷期間の延長のために活用する。
2)出庫後、エチレン処理の効果は持続しないので、速やかに使用するか、保管が必要な場合は低温管理が望ましい 。
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