「エリモショウズ」に落葉病抵抗性を付けたあずき新品種「十育167号」
十勝農業試験場 研究部 豆類グループ
中央農業試験場 作物開発部 生物工学グループ
1.背 景
昭和56年に育成された中生品種の「エリモショウズ」は耐冷性と収量性に優れ、良食味で、製餡適性の実需者により評価が高いことから広く作付されている。しかし、同品種は落葉病抵抗性を持たず、生産の拡大とともに被害が増加した。十勝農試では、「きたのおとめ」(平成6年)などの抵抗性品種を育成してきたが、製餡適性が「エリモショウズ」とは異なるため、すべてを置き換えるに至っていない。そのため、「エリモショウズ」と同等の食味と製餡適性を有する落葉病抵抗性品種が生産現場及び実需者から強く求められていた。
2.育成経過
「十育167号」は、落葉病抵抗性で成熟期“中の早”の「しゅまり」を母、風味が良く高品質で成熟期“中の早”の「エリモショウズ」を父として人工交配を行い、その後、落葉病抵抗性遺伝子(Pga1)をDNAマーカーにより選抜しながら「エリモショウズ」を計6回戻し交配した後代から選抜し、「エリモショウズ」と落葉病抵抗性以外の農業特性がほぼ同じであることを確認し、育成した。
3.特性の概要
1 )「十育167号」は、対照品種「エリモショウズ」及び「きたのおとめ」と比べて、開花期、成熟期、倒伏程度、子実重は同等である(表1)。
2)百粒重、外観品質、種皮色、製餡適性等の品質は、「エリモショウズ」と同等である(表1、2)。
2 )落葉病、萎凋病に抵抗性を持つが、茎疫病抵抗性は対照品種と同じ“弱”である。低温抵抗性は“中”である(表3)。
3)落葉病発生圃における子実重は、「エリモショウズ」より重く、「きたのおとめ」よりやや重い(図1)。
4)製品試作試験において、加工適性は「エリモショウズ」と同等である(表4)。
4.普及態度
「十育167号」を「エリモショウズ」(平成27年 約7,000ha)及び「きたのおとめ」(同左 約4,300ha)のすべてに置き換えて普及することにより、「エリモショウズ」の固定需要への安定供給と北海道における小豆の生産振興に寄与できる。
1)普及対象地域
北海道の小豆栽培Ⅱ(早・中生種栽培地帯)~Ⅳ(中生・中晩生種栽培地帯)及びこれに準ずる地帯(図2)
2)普及見込み面積 11,000ha
3)栽培上の注意事項
落葉病、萎凋病に抵抗性を持つが、栽培に当たっては適正な輪作を守る。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp