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堆肥の効き目は、まくタイミングと土との混ぜ方で変わります

十勝農業試験場 研究部 生産環境グループ

1.背景と目的
 有機・クリーン栽培等、化学肥料の施用量を制限する環境保全型農業において、初期生育・収量確保のために堆肥の有効活用がますます重要になっている中、堆肥の施用時期と混和方法による効果の違いについて知見が求められている。
 そこで、畑作物における堆肥の施用時期と混和方法が生育・収量に及ぼす影響について明らかにする。

2.試験方法
1)堆肥混和方法・施用時期の検討
 ・ねらい: 生育期間の異なる畑作物を供試し、堆肥の施用時期と混和方法を変えた処理区を設け、各作物の生育・収量・養分吸収に与える影響を明らかにする。
 ・ 試験項目等:供試圃場:十勝農試圃場(土壌型:淡色黒ボク土)。
  供試作物: てんさい「リッカ」、ばれいしょ「さやあかね」(2014~2015年)・「男爵薯」(2016年)、スイートコーン「恵味ゴールド」。
  堆肥の施用時期と混和方法: ①秋反転区(対照区)、②秋混和反転区、③春反転区、④春混和区、⑤無堆肥区。
  プラウによる反転深さ:22~29cm、ロータリーハローによる混和深さ:14~16cm。
  供試堆肥: 完熟バーク堆肥(水分60%、窒素0.8~0.9%、リン酸0.6%)、施用量は2014年:5t/10a、2015~2016年:3t/10a。
  施肥処理:減肥区(施肥ガイドに基づき堆肥分を減肥)、無肥料区、施肥標準区。
※ ③春反転区以外はすべて前年秋にプラウによる反転を実施。また当年春にはすべての処理区でロータリーハローによる混和を実施。

3.成果の概要
1 )てんさいの生育(6月下旬)は堆肥の秋施用よりも春施用で優り、リン酸吸収量(6月下旬)も春施用が秋施用に優る傾向にあった。一方、草丈・乾物重・リン酸吸収量について、秋混和反転区が秋反転区に劣ることがあった。収穫期については、根重・糖量ともに堆肥の春施用は秋施用に優る傾向にあったが、窒素・リン酸吸収量は堆肥処理間で大差ない傾向にあった(表1)。
2 )ばれいしょの生育と7月下旬の窒素吸収量(塊茎)については、概して春反転区が秋混和反転区に優る傾向にあった。収穫期については、デンプン価で秋混和反転区が春反転区に有意に優ったことを除けば、収量・中心空洞および窒素・リン酸吸収量の処理区間差は判然としなかった。(表2)。
3 )スイートコーンの開花期の生育と窒素・リン酸吸収量は、春施用区が概して秋施用区に優った。一方秋施用区では、生育と窒素・リン酸吸収量について、秋混和反転区が秋反転区に劣った。収量(雌穂生重・全乾物重)およびリン酸吸収量についても、概して春施用区が秋施用区に優り、秋施用区どうしでは秋混和反転区が秋反転区に劣った(表3)。
4 )以上のように、堆肥の春施用には畑作物の生育・収量の向上が期待できるが、一方で秋施用(秋反転)には作業分散や病害虫リスク(タネバエの発生等)の低減等のメリットがあるので、生産現場の営農実態に合わせて施用時期と混和方法を選択すべきと考えられた。
5 )窒素の肥料換算係数は、ばれいしょでは北海道施肥ガイド2015の設定値0.2より値が低く、スイートコーンではばらつきが大きかった。両作物ともてんさいより生育期間が短く根域も浅いことが評価を難しくした理由と考えられた。てんさいにおける窒素の肥料換算係数は0.22~0.37で処理間差はなく、0.2に近似した(表4)。
6 )リン酸の肥料換算係数は、ばれいしょでは処理間差はなく、北海道施肥ガイド2015の設定値0.6を上回った。スイートコーンでも、無肥料区の秋混和反転区で0.20と低かったことを除けば0.6をほぼ上回り、てんさいでも0.51~0.64とほぼ0.6に近似した(表4)。
7 )以上のことから、堆肥の施用時期と混和方法によって窒素・リン酸の肥料換算係数を変える必要がないことが示された。

4.成果の活用面と留意点
1)堆肥の秋混和反転は、畑作物の生育・養分吸収量・収量が劣ることがあるので実施しない。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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