多収性ながいも「とかち太郎」を作りこなす ~目的に合わせて栽培法を選ぼう~
十勝農業試験場 研究部 地域技術グループ
1.背景と目的
道産ながいもは高収益作物で需要も堅調なため増産に対する要望が強いものの、栽培には深い作土が必要で生産可能なほ場は限られている。面積当たり収量の向上が求められる中、十勝農業試験場は地元生産者団体等と共同で多収性ながいも「とかち太郎」を育成した。産地では「とかち太郎」の導入が進みつつあるが、それに伴い「とかち太郎」の特性を活かした栽培技術が求められている。
2.試験方法
栽植密度および切いも重の違いならびにマルチの有無が「とかち太郎」の収量性等に及ぼす影響を明らかにする。
実施場所:十勝農試(芽室町)、現地(帯広市、音更町)。
供試品種:「とかち太郎」(対照:「音更選抜」(帯広市現地のみ「川西選抜」))。植付け:5月下旬。
栽植密度: 畝幅90cm(寄せ畦)とし、株間24cm(慣行、4,630株/10a)または18cm(密植、6,173株/10a)の2水準。
切いも重:150g(重量化)、100g(慣行)、70g(軽量化)の3水準。
マルチフィルム:有(ライトグリーン)、無の2水準。
調査項目:規格内収量、規格別重量割合、一本重、いも全長、いも径、いも形比など。
3.成果の概要
1 )「とかち太郎」は密植(株間18cm)、慣行(株間24cm)いずれの条件でも「音更選抜」より多収性を示し、両品種・系統間の収量差は、条件によらず同程度であった(図1左)。また、株間によらず両品種・系統の乾物率は同等であった(データ略)。
2 )切いもを軽量化(70g)した場合、慣行と同様に「とかち太郎」は「音更選抜」より多収性を示し、収量差も慣行と同程度であったが、重量化(150g)した場合、両品種・系統に収量差は認められなかった。また、「とかち太郎」は切いもを軽量化しても「音更選抜」の慣行と同等の収量が得られた(図1中央)。なお、切いも重によらず両品種・系統の乾物率は同等であった(データ略)。
3 )密植と切いも軽量化を組合せた場合、両品種・系統とも慣行と比べ同等~1割程度の増収となり、「とかち太郎」は同条件の「音更選抜」より多収であった(図1右)。
4 )無マルチ栽培では両品種・系統とも一本重が減少し、収量の高位安定化のためにマルチが有効であることを確認した。また、「とかち太郎」は無マルチ栽培における一本重の減少が「音更選抜」より軽微であった(データ略)。
5 )「音更選抜」はいものサイズによりいも形比が10~12の範囲で変動し、一本重が400g以上の範囲では小さいサイズほどいも形比が大きく細長いいもになる傾向であったのに対し、「とかち太郎」はサイズによらずいも形比が10前後で安定していた(表1)。
6 )栽培法により収量当たり生産費や多く得られる規格が異なった。密植栽培、切いも軽量化、両者の組合せおよび慣行栽培の中で生産費が最も低いのは密植栽培であり、国内で一本ものとして引き合いの強いLおよび2Lが多いのは組合せ栽培、3Lが多いのは慣行栽培であった(表2)。
7 )以上から、「とかち太郎」は従来と同様の考え方で株間や切いも重、マルチなどの栽培条件を設定可能であり、安定して多収性を発揮すると考えられた。栽培法により多く得られる規格や収量当たり生産費が異なることから、販売方法等に応じて各種条件を設定することが望ましい。
4.成果の活用面と留意点
「とかち太郎」の青果生産に際しての参考として活用する。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp