直播たまねぎの収量安定化のために
十勝農試 研究部 地域技術グループ、生産環境グループ
北見農試 研究部 地域技術グループ
1.背景と目的
国産野菜に対する要望の高まりや畑作地帯における野菜作付け意欲向上の中、いくつかの産地においてたまねぎ直播栽培が試行されている。しかし、移植栽培より生育期間が短い直播栽培では気象不良時等に球肥大不足が起きやすいことや、移植栽培よりも生育ステージが遅れるためハエ類(タネバエ、タマネギバエ)による被害を受けやすいこと等が、直播栽培の定着を妨げる要因となっている。
2.試験方法
1)直播栽培収量安定化のための株立ち数の策定
直播栽培における最適な栽植密度と現場で対応可能な畝幅と株間を明らかにする。併せて、現地における栽培実態に関する情報を収集し、直播栽培技術の改善に必要な課題を明確にする。
試験項目:品種、播種粒数、べたがけ、現地実態調査
2)ハエ類被害軽減方策の検討
ハエ類の被害実態(被害株率、時期、品種間差等)を把握し、被害軽減方策について検討する。
試験項目:品種、栽植様式、薬剤処理方法
3.成果の概要
1 )春季高温干ばつ傾向であった2014および2015年の現地実態調査の結果、直播栽培は苗を定植する移植栽培に比べ、春季の干ばつの影響が小さいと考えられた。
2)播種機による点播では、播種速度が速いほど出芽率が低下し株間のばらつきが大きくなった。
3 )不織布べたがけによる地温上昇効果は平均地温で2~4℃程度で、出芽は2~4日早まり、初期生育は促進された(図1)。べたがけにより倒伏期が1週間以上早まる場合もあったが、収量への影響は判然としなかった。また、高温と干ばつが特に著しい条件では、べたがけ被覆下で高温障害による枯死個体がみられたが、収量の低下はみられなかった。
4 )供試品種中では「オホーツク222」がもっとも収量性が安定しており、「北もみじ2000」がこれに次いだ。「ウルフ」および「パワーウルフ」は「オホーツク222」に比べ規格外球数および貯蔵前腐敗球がやや多く、球肥大が不十分となる事例もあったものの、熟期および収量性は使用可能な水準であり、圃場条件によっては選択肢になりうる。
5 )一般的な播種作業幅1.2mで播種条数を従来の4条から5条とすることにより畝幅を縮小し、大幅な播種粒数の増加を可能とした。
6 )株立ち数が多いほど収穫球数が多く、球肥大は劣った。株立ち数3,900株/aで最も多収となったが、平均一球重は180gを下回った(図2)。収量性と球肥大性のバランスを考慮した目標株立ち数3,400~3,900株/aを得るために必要な播種粒数は、3,800~4,200粒/aであった。
7 )直播たまねぎに対する主な加害種はタマネギバエであった。ダイアジノン粒剤の播種前土壌混和処理は被害軽減に一定の効果が認められ、不安定ながら現状では唯一の対策である(図3)。
8)以上を2012年指導参考事項の「たまねぎ直播栽培体系」に反映し、表1のとおり改訂する。
4.成果の活用面と留意点
たまねぎ直播栽培導入時の参考とする。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro. or. jp