被災地へ歌声届け 帯広小教諭・川崎さん作曲の組曲 記憶歌い継ぐ
帯広小学校教諭で作曲家の川崎智徳さん(49)が東日本大震災をテーマに作曲した組曲「その声はいまも-無伴奏女声四部合唱のための」が19日、帯広市民文化ホールで開かれた帯広三条高校合唱部(弥田真侑部長、部員35人)の第26回定期演奏会で初演された。同部を中心に、市内中・高校の合唱部員らを加えた84人が鎮魂のハーモニーを響かせ、多くの来場者の心を打った。
同組曲は川崎さんが、震災をテーマに書かれた詩人高良留美子さん(東京)の詩「その声はいまも」に感銘を受け、同じく高良さんの震災をテーマにした「生きて」「いのり」の2つの詩とともに3曲を作って構成した。震災の悲惨さや被災者への祈りを込めて作られている。
定期演奏会は午後6時半に開演。同組曲はその第4部で、三条高合唱部をはじめ、帯広第一中と帯広柏葉高の両合唱部、三条高合唱部OGによる女声合唱団consono(コンソーノ)の合同で歌われた。
初めの「生きて」は、終盤のささやくような声と足踏みで震災のむごさなどを表現。続く「いのり」では鎮魂の思いを込め、優しく歌声を響かせた。最後の「その声は-」は、迫る津波を前に、最後まで避難を呼び掛け続けて亡くなった女性を描いた一曲。避難呼び掛けのアナウンスも織り交ぜ、震災を未来へ語り継ぐ決意を込めた。
会場には約1000人が詰め掛け、組曲にじっと聴き入った。母親と一緒に訪れた帯広小6年の中小原一帆君(12)は「足踏みなど印象的なシーンが多かった」とし、中札内村の中谷郁夫さん(64)は「皆がこの歌を聴き、心のどこかに震災の記憶をとどめておければと思う」と話した。
演奏会を終え、三条高合唱部の弥田部長(2年)は「未熟な点もあったが、ベストを尽くすことができた」と充実した表情で話した。会場でステージを見守った作曲者の川崎さんは「歌い手の気持ちが来場者に伝わっていたと思う。震災を忘れないために、今後も歌い継がれていってほしい」と願った。
(大木祐介、菅生佳孝)