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シバムギ優占草地の植生改善による経済効果

道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ

1.試験のねらい
 近年、牧草地の植生が悪化しているが、草地整備事業予算の減少で草地更新率は低下している。生産者が自ら植生改善するよう草地更新の経済効果を示し、普及啓蒙を図ることが重要である。そこで、現在最も問題になっている地下茎型イネ科雑草シバムギの収量や産乳性をチモシーと比較して、モデル的に草地更新の経済効果を算出する根拠を示す。

2.試験の方法
1 )シバムギの特性(個体変異・収量・飼料成分)を明らかにする。個体変異は道内4地域の92圃場より個体を採取し、札幌で個体植えをして形態を計測した。収量および飼料成分は、3地域の同一圃場内のシバムギ群落およびチモシー群落から牧草を刈取って分析した。

2 )隣接する圃場(土壌条件、気象条件、施肥等の管理条件が同一)から調製したシバムギおよびチモシーのサイレージを用いて、サイレージ乾物割合約50%のTMRを調整し、4%乳脂補正乳量35kg 水準(一番草;各13頭)および30kg 水準(二番草;チモシー9頭、シバムギ8頭)の泌乳牛に給与し、乾物摂取量および乳生産を比較した。

3 )1)の牧草収量、2)の摂取量および乳量に、実際の乳価および購入飼料費を加え、購入飼料費差引乳代を算出し、シバムギとチモシーとの差額を経済効果とした(表1)。

3.成果の概要
1)道内に自生するシバムギは草丈、葉長、葉幅がチモシーより小さく、そのばらつきが大きかった。

2 )シバムギの収量はばらつきが大きいが、一番草および年間収量はチモシーの8割程度で有意にチモシー収量より少なかった(P<0.001およびP0.05)。

3 )シバムギはチモシーに比べ繊維含量が少なかったが(P<0.05以上)、繊維中の低消化性繊維の割合が高かった(表2;P<0.05)。これは、同時に刈取ると、シバムギのほうがチモシーより生育ステージの進行が遅いためであると考えられた。推定可消化養分総量は両草種同程度であった。

4 )シバムギサイレージはチモシーサイレージに比べ低消化性繊維の含量が多かったが(P<0.05)、サイレージ乾物割合50%のTMRにするとその差は小さくなり、TMR摂取量および4%乳脂補正乳量に明確な差は見られなかった(表3)。

5 )根釧地域の収量調査および産乳性試験の結果から購入飼料費差引乳代を試算すると、シバムギ優占草地に比べチモシー草地のほうが359,444円/ha 高かった。草地更新費用は、自家更新で169,026円/ha、委託更新で287,240円/ha であり、一年分の収穫ロスは178,194円/ha であることから、2年で費用の回収ができ、草地更新の経済効果が認められた。

4.留意点
1)植生が悪化した草地を有する生産者への草地更新普及の根拠となる。
2)シバムギ優占草地の草地更新は、収量により優先順位を判断する。
3)本成績のサイレージを調製した圃場は土壌分析と北海道施肥標準に基づき化学肥料を施用したものである。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ 西道由紀子
電話(0153)72-2036  FAX(0153)73-5329
E-mail:nisimiti-yukiko@hro.or.jp

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