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地域防疫のための酪農場の感染症モニタリング法

畜産試験場 基盤研究部 家畜衛生グループ

1.試験のねらい
 採材が容易な牛舎環境材料を用いて、より少ない検体数で効率的にサルモネラを検出する検査方法を明らかにする。さらに、モデル地区において実規模でのサルモネラ症、マイコプラズマ乳房炎およびBVD-MDのモニタリングを試行し、その結果をもとに効果的な酪農場の感染症モニタリング法を提案する。

2.試験の方法
1 )サルモネラ(S.Typhimurium)を添加した搾乳牛の糞尿材料を、乾燥処理は実験室内で13週間自然乾燥させ、凍結処理は-30℃での凍結と室温での解凍を2回繰り返した。損傷菌を含むサルモネラ菌数を混釈重層培養法および最確数法による増菌培養法で測定する。
2 )サルモネラ症発生農場4戸(いずれもフリーストール牛舎)において農場内40か所以上から環境採材を行い、検出頻度を比較する。
3 )A町をモデル地区とし、3年間感染症モニタリングを試行し(表2)、試行前の病原体検出状況および陽性時における全頭検査との比較と実施上の課題や対応方法について調査する。

3.成果の概要
1 )自然乾燥開始後3週目で糞尿材料の推定水分含量は0%となり、損傷菌を含むサルモネラの菌数は乾燥前の約1/10に減少した。しかし、3週目以降の菌数は13週目までほとんど低下せず、検出が可能であった。また2回の凍結・解凍により損傷菌を含むサルモネラの菌数は約1/10に減少したが、検出は可能であった。EEMブイヨン培地による前増菌を用いた培養検査方法は、損傷菌を検出できることから牛舎環境材料を用いた検査に有効であった。
2 )サルモネラの検出頻度は堆肥場や牛床清掃の終末部で高かった(表1)。したがって、採材場所は堆肥場を第一選択とし、各牛舎の清掃終末部等、農場規模に合わせ複数か所とするのが有効であると考えられた。
3 )サルモネラは3年間で3戸から検出され、試行前の9年間で1戸よりも検出頻度が高く(表2)、検査回数の増加や採材方法の改善による効果が示唆された。マイコプラズマは3年間で9戸から検出されたが、検出戸数や全頭検査で摘発される陽性頭数は年次を追って減少し、おおむね2ヶ月間隔の検査による早期発見がマイコプラズマ乳房炎の発生低減に寄与したと考えられた。サルモネラおよびマイコプラズマ検出農場のうち、1戸および6戸で陽性牛が摘発され、清浄化対策がとられた。BVDVは3年間で3戸から検出され、うち1戸で陽性牛が摘発・とう汰された。以上のことから、試行したモニタリング検査は、モデル地区における防疫対策の向上に寄与したと考えられた。なお、モニタリング検査陽性でも陽性牛が確認されない場合があり、病原体の過去の侵入や一過性の感染を検出したと考えられた。

4.留意点
1 )家畜伝染病自衛防疫組合等が、地域でサルモネラ等の自主検査を実施する際に活用する。
2 )本成績における試行と同等の感染症モニタリングにより、地域の防疫水準向上が期待できる。地域防疫のための酪農場の感染症モニタリング法畜産試験場 基盤研究部 家畜衛生グループ



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 家畜衛生グループ 福田 茂夫
電話(0156)64-0615  FAX(0156)64-6151
E-mail:fukuda-shigeo@hro.or.jp

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