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上流部に不安定な土 北大農学研究院 小山内信智・特任教授

北大農学研究院 小山内信智・特任教授

 十勝管内の日高山脈東部で発生した土石流を調査した小山内信智特任教授に、現地の様子や今後の注意点について聞いた。
(聞き手・道下恵次)

 -日高山脈の上流部の複数カ所で土石流が発生したメカニズムは。
 急勾配の谷の中に何十年、何百年とたまっていた土砂が、大雨で水が集中したことで少し動きだし、その下にたまっていた土砂をも削り取りながら大きくなって下っていき、土石流を起こした。

 -土砂の多くは花こう岩という。強固なイメージがあるが。
 花こう岩自体は御影石とも呼ばれる硬い岩だが、風化すると細かな砂(マサ土)になる。土石流が起きた9河川は花こう岩が分布している地域なので、その砂が大量にある。また、風化せずに残った大きな岩もある。こうしたものが土石流となって流れてきた。

 ペケレベツ川では第一砂防ダムまで土石流が下ってきた。そこで石れきは止まり、第二砂防ダムはマサ土が堆積していた。もし砂防えん堤がなければそのまま下流に流れ、もっと下流域では川が大きく氾濫した可能性もあったかもしれない。それでも大量の土砂が住宅地に近い下流まで流れ込んだ。

大量の土砂や木が流れ着いた上、側岸が浸食され川幅を広げたペケレベツ川の上流部(写真は北大農学研究院国土保全学研究室提供)

 -土石流の発生によって川はどのように変化したのか。
 戸蔦別川でみると、河岸段丘が造られたころの地形では、川は暴れながら(蛇行しながら)下流に土砂を運んでいた。その後、上流からの土砂供給が少ない時期が長く続いたため暴れることもなくなり、真ん中だけが削られるようになって災害前の川幅になった。

 そこに何百年ぶりかの大雨で、上流から土砂や木が大量に流れてきた。それが橋に引っかかるなどして、水流が詰まって川岸を浸食しながら川が暴れ出し大きく蛇行した。大量の水と上流からの砂が運ばれてきたことも影響し、下流部は水位が上がり、氾濫や堤防決壊が発生した。

 -土石流が発生して、今後はどのようなことに注意したら良いか。
 上流には不安定なマサ土が供給された。また下流の方は土砂がたまった状態になっている。それほど大きくない出水でも簡単に土砂が下流まで移動すると思われ、数年にわたって中小の出水でも土砂供給が多い期間が続くとみられる。


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