大気球落下、電線に絡まる 大樹・JAXA 人的、送電被害なし
【大樹】宇宙航空研究開発機構(JAXA)が5日早朝、町多目的航空公園内の大樹航空宇宙実験場で行った大気球実験で、放球作業中のロープカッターの誤作動によって大気球が同実験場内に落下、送電線に絡まった。この影響で、JAXAは実験を取り止めた。大気球実験が途中で中止になるのは2008年以来、2度目。けが人はいなかった。北電帯広支店によると、停電などの被害は出ていない。
この日は大気球を利用した微少重力実験が予定されていた。体積30万立方メートルの気球につなげた鉛筆型の実験機器を高度40キロから落下させ、機器に取り付けたひもに点火。ほぼ無重力状態で火がどのように広がるかを観察しようとした。
JAXAのスタッフ30人で準備を進め、午前4時10分ごろ、気球が飛ばないように抑えつける台車から放球台車の上に立ち上げようとしたところ、何らかの原因で大気球と搭載機器部の連結部にあるロープカッターが誤作動し、切り離された大気球のみが浮上した。
幸い、ロープカッター作動後に動く、大気球のフィルムを破く機能が正しく働き、同実験場内に着地。同6時半までに北電と協力し、撤去した。
(関根弘貴)
大気球落下の原因は、前回(2008年)と同様、ロープカッターの誤作動だった。
ロープカッターは実験機器がつり下がっているパラシュートと大気球をつなぐロープ(1メートル)に設置されている。実験終了後、大気球とパラシュートを降下・着水させるために両者を切り離す役目を担う。的確なタイミングで管制棟から指令を送ることで作動するように設定されている。
JAXAによると、08年の落下はカッターを動かす電気回路の衝撃に対する弱さから不具合が生じた。修正後、現在まで同様の事例は起こっていない。
今回の実験は約20人が見学。放球台車に立ち上がる途中で「バチン」という大きな音とともに大気球のみが浮上する緊急事態に、実験場内は一時、騒然となった。大気球が着地した付近には、町の航空燃料屋外貯蔵所があり、200リットルのドラム缶9個が並んでいた。
誤作動の原因は不明。JAXA宇宙科学研究所大気球実験室の吉田哲也室長は「ご迷惑をお掛けしたことをおわびする。今後、今回の実験を含めた大気球実験が安全に行えるよう原因究明と対策を練っていきたい」と話している。