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大樹から宇宙へ(1)「トラブル続きの1号機」

世界でもまれな実用化を目指し、大樹町で打ち上がった「カムイ」の1号機(2002年3月21日)

 NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC、札幌)が大樹町を拠点に開発を進める「CAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケット」の打ち上げは、3月で10周年を迎える。同法人も6月で創設10周年。宇宙開発に対する地域住民の理解を得ながら、打ち上げは大樹を主舞台に50機を超え、カムイはHASTICの“顔”に成長した。節目を前に、開発者の苦労やこれまでの成果、大樹の可能性などを5回にわたり紹介する。

 「機体は全長が現在の半分以下。まるでおもちゃのようで、本当に飛ぶのかなという感じだった」(大樹町内の関係者)。

 2002年3月21日。既に航空宇宙実験の実績があった大樹町で「カムイ」の1号機が打ち上がった。当時は北大の学生主体で行われ、実験に必要な机や椅子、発電機などの調達は町役場の協力を受けた。打ち上げの時刻もはっきりとせず、現在のようにカウントダウン通りに上がることはなかったという。

 カムイロケット考案者の永田晴紀・北大大学院教授(46)は「何をやるにもトラブルがあった。バッテリーが壊れたり、ケーブルが合わなかったり、そんなレベル。大樹の皆さまには以来ずっとお世話になっている」と振り返る。

 永田教授は、1996年に北大に新設された宇宙工学講座の助教授として北海道に来た。それまでは、旧日産自動車宇宙航空事業部(現IHIエアロスペース)で固体ロケットの研究開発に携わっていた。

 ハイブリッドロケットは北大の新講座のために用意した研究テーマの1つにすぎなかった。ハイブリッドは安全性が高い一方、燃焼に時間がかかり、推力が小さい。世界的にもほとんど実用化されていない。

 しかし、永田教授は98年ごろまでに「縦列多段衝突噴流」(Cascaded Multistage Impinging-jet=カムイの名称は頭文字に由来)と呼ばれる燃焼方式を新たに考案した。エンジンの基礎燃焼実験では新方式で手応えのあるデータを取得でき、「カムイロケットで実用化までいけるだろう」と感じた。

 永田教授はカムイロケットの業績で、07年度の日本航空宇宙学会賞(技術賞)を受賞。前年度には小惑星探査機「はやぶさ」が選ばれた権威ある賞だ。カムイロケットは、今では主要研究テーマに成長した。

 大樹町美成に打ち上げ場所があったことも幸運だった。市街地から海岸沿いへ車で15分ほどの、半径1キロに民家や電線などもない牧草地で、海に面している。「道内でもなかなかこういう所はない。大樹がなければ場所探しに苦労しただろう」(永田教授)という。

 町美成は85年の北海道航空宇宙産業基地構想で、ロケット発射施設や大型滑走路の建設構想が上がっていた場所だった。壮大な宇宙基地構想への関心が薄れつつある中、世界でも珍しいハイブリッドロケットの実用化への挑戦が大樹で始まり、宇宙のまち・大樹に新たな歴史が刻まれることになった。(佐藤圭史)

<CAMUI型ハイブリッドロケット>
 固体燃料(ポリエチレン)と液体酸化剤(液体酸素)を組み合わせた推進剤を使用。火薬を使わないため、安全性が高く、火薬保管などのコストも省ける。超音速飛行環境試験、成層圏観測、微少重力実験などへの利用が可能。これまでに超小型模擬人工衛星「缶サット」の打ち上げなどで使われた。

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