「餌付けダメ」啓発も絶えない餌やり 関係者は限界
帯広市内の緑ケ丘公園では、長年にわたり注意喚起を続けていながら減ることのない問題がある。「野生動物への餌付け」だ。野生動物との触れ合いは感染症への感染リスクが高まることから、公園を管理する「みどりと花のセンター」は餌付け禁止を訴えているが、「啓発や注意喚起を目にしながら、餌付けを続ける人々への対応に限界を感じている」と関係者は肩を落とす。(近藤周)
気温が氷点下の12月の朝。午前9時に同公園内の「彫刻の径(みち)」を歩いていると高確率で遭遇できるのがエゾリス、シジュウカラ、そしてそれらの野生動物に餌付けをする人たちだ。「野生動物に食べ物を与えないでください」との看板には目もくれず、動物たちを慈しみながらクルミやピーナツを木に置いたり、手渡しで餌を与えたりしている。
彼らは多少の罪悪感を抱えながらも、「冬に餌が少なくなる動物たちのために」という使命感や、「動物と近くで触れ合い、癒やされたい」という欲求から餌付けを続けている。餌付けをする人に話を聞くと、「もう何十年も前から」行っているという。
同センター副センター長の大熊勲さんによると、遅くとも1980年代には餌付けが始まっており、エゾリスが今ほど見られなかった当時は容認されていた時期も。環境保全に取り組む市民団体が「餌台」を設置していたこともあった。
その動きが見直されたのは2000年代初頭、人獣共通感染症の危険性が言われ始めたからだ。野生動物との接触は、付着したダニやノミにより媒介される感染症への感染リスクがある。同公園では02年に餌台を撤去。エゾリスやその他野生動物への餌付け禁止の啓発を開始した。
同センターは環境省が出している指針などを基に、公園管理者として園内のパトロールや看板・SNSによる注意喚起を行っており、今年は市内の全小学校に向けて啓発チラシを配布した。それでも「この3年で餌付けが増えることはあっても、減ってはいない」と大熊さん。今年も冬が近づくにつれ餌付けの光景は日常化していった。最近では他の公園利用者にやり方をレクチャーし、餌付けを“布教”し始める人や、物珍しさに立ち止まるギャラリーを喜ばせようと餌付けにやりがいを見いだす人も見受けられるという。
大熊さんは感染症リスクの他にも「エゾリスや野鳥が人を選ばずに接近・接触してくる状況にあり、他の利用者に迷惑が掛かっている」と言い、餌付けをする人は「そういう状況に気付いていない」と指摘する。また「注意されると強く反発する人もいて、とても残念」と話す。
「動物観察で癒やされたい気持ちは理解できるが、餌付けは決して責任ある行為ではない」と言葉を強める大熊さんだが、「餌付けをする人も根は悪い人たちではない。どうしたら分かってもらえるのか…」と今も頭を抱えている。