障害者事業所が夏目漱石らの短編集作製 道内でも異例の取り組み
帯広市内の就労継続支援B型事業所「ワークサポートふれあい」(東11南9、富田勝江所長)は、著作権が失効した日本の近代作家の作品を集めた小冊子を作製した。夏目漱石、太宰治、宮沢賢治の3冊で、それぞれの短編小説をまとめた。今後も「ふれあい文学館シリーズ」として展開する。
同事業所によれば、作家の死後70年が経過し、著作権フリーとなった小説を製本し、販売している障害者の事業所は道内でも例がないという。
同事業所は障害や難病などを抱える利用者約30人が在籍。そのうち、10人ほどのパソコン部門では年賀状や名刺、自費出版本などを受注しているが、時期によって作業量に波があることが課題だった。そのため、同事業所の川瀬雅子生活支援員がオリジナルの本づくりを提案。昨年末から作業を進めてきた。
図書館から借りた古い全集などを底本とし、入力作業やレイアウト、ルビ振り、計10回の校正、自前の機器による印刷・製本作業などに取り組んだ。作家の肖像や物語の内容をモチーフとした表紙の絵やデザインも各利用者が手掛けた。
収録作品は夏目漱石の本が「琴のそら音」「文鳥」、太宰治は「富嶽百景」「新樹の言葉」「葉桜と魔笛」、宮沢賢治は「なめとこ山の熊」「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」「よだかの星」「猫の事務所」。いずれも70ページほどで、サイズは縦19センチ、横13・5センチと文庫本より一回り大きいサイズ。文字も大きめに設定している。
作業に携わった利用者は「入力量は多かったが、校正などで読むと面白かった」と思いがけず文学に触れた様子。川瀬生活支援員は「普段はあまり日本の近代文学を読まない人にも試しに手に取ってほしい」と話している。
今後は直木三十五、森鷗外の本を予定している。
価格はいずれも250円。同事業所が入る市民活動プラザ六中2階で購入できるほか、商品を扱ってくれる店などを広く募集している。
問い合わせは同事業所(0155・23・6699)へ。(松村智裕)