髪があってもなくても、自分が選択しやすい社会に ヘアドネーション取材した帯三条生
帯広三条高校の鈴木沙有理さん(3年)は、病気やけがなどで頭髪を失った子どもらのために髪を伸ばして寄付する「ヘアドネーション」について調べ、思いをレポートにまとめた。当事者や支援団体などに直接話を聞き、医療用ウイッグの普及を前向きに捉える一方で、「髪がなくても、ありのままの自分を受け入れる社会にしていきたい」と感じている。
ヘアドネーションは、鈴木さんが所属する放送局の先輩の荒麻菜絵さんらが2014年に制作した映像番組が全国的に話題を呼んだ。鈴木さんもこの番組に感銘を受け、当時はあまり普及していなかったヘアドネーションが現在どう変化しているかを取材した。
荒さんに連絡を取ると、番組制作後、2度のヘアドネーションを行っていた。ただ、自らも円形脱毛症で悩んだこともあり、「何で隠さなくちゃいけないんだろうって疑問に感じていた。髪の毛がないと困るというのはどうなんだろう」と、髪がない人に対して面白がることもある社会の目について疑問を持っていた。
まだ人前でウイッグを外すことに抵抗がある女性、友人にカミングアウトできたという高校生…。さまざまな当事者の話を聞く中で、鈴木さんが印象に残ったのは、当事者と家族のためのコミュニティー「ASPJ」の代表理事土屋光子さんの「私の中でウイッグはメガネと一緒」という言葉だった。土屋さんは「こうあらねばならないという価値観に自分をあてはめる必要はなくて、ウイッグやカミングアウトの選択肢を自分で選べることを思い出してほしい」と続けている。
取材を通じ、鈴木さんは「その人が置かれている環境や自らの思い、そして周囲の思いのバランスを取りながらウイッグの着用やカミングアウトの有無を選択できたらいいと思う」と感じている。
取材は昨年放送局で番組を作り、今年の冬に現代社会の課題としてレポートにまとめ、同級生や全国の高校生らに伝えた。「髪がなくても、その人の選択を受け入れる社会になっていけば。何で髪がないんだろう?と周りが思わないような、誰もが自分らしく生きられるようになってほしい」と願っている。(松田亜弓)