十勝出身の小原比呂志さんが世界遺産屋久島でガイド35年 ふるさと日高の国立公園化に期待
豊かな原生自然が広がり世界自然遺産に登録される鹿児島県の屋久島で、十勝出身の小原比呂志さん(59)がガイドとして活躍している。屋久島ガイドの草分け的存在で、35年前から縄文杉(樹齢数千年)の案内や環境教育、若手ガイドの育成など幅広く活動を展開している。
小原さんは1962年音更町生まれ。帯広柏葉高校卒業。高校時代は山岳部に所属し日高山脈に登った。鹿児島大の水産学部を卒業後、奄美大島でトラフグなど高級魚を養殖する水産業に就いた。知人から屋久島の案内を依頼されたことがきっかけとなり、87年に屋久島への移住を決断した。
当時は屋久島に登山文化がなく、専業の山岳ガイドはいなかった。縄文杉の知名度が上がり始めた時期で、「進路に迷っていたし、真面目にやれば生活できるかもしれない」とガイドとしてのキャリアをスタートさせた。
89年に屋久島ガイド協会を創設。島内で交友があった元環境省職員、ダイビングショップ経営者の3人で、島内初のガイド会社「屋久島野外活動総合センター」を93年に立ち上げた。その半年後に世界遺産登録が決まり、島の知名度向上とともにガイドの仕事が増えていった。
海の調査や山の観察会など毎日のように島内のフィールドを歩いて回った。「だんだん目が肥えてきて見えなかった植物や生き物が見えるようになった」。現在は人気スポットとなった白谷雲水峡をめぐるフォレストウオークなど新たなツアーを考案し、屋久島の魅力を引き出していった。
「観光で終わらず学びや面白い体験を提供できるガイドを増やしたい」と後進の育成にも力を注ぐ。屋久島ガイドをけん引する存在で、エコツーリズムの推進のほかガイド料金を国際水準にまで引き上げるなど功績は多岐にわたる。
新型コロナウイルスの影響でガイド需要が落ち込んでいるが、今年は環境省の補助金を活用して屋久島の自然環境をまとめたガイドブック(500部、非売品)を出版。屋久島の魅力を発信し続けている。
「十勝の話題になると自慢するのが日高山脈なんです」と日高山脈襟裳国定公園の国立公園化を歓迎する。「保全と利用は両輪で進めるべき。自然を学べる場が増えれば十勝の財産になる」と期待を込める。
ガイド職に就いたのは、高校時代に登った日高山脈の存在も影響したという。「実は、日高山脈に行きたくて畜大受験や山岳救助の仕事も考えました」と笑う。いまも屋久島からふるさとの山に目を向けている。(岡田優人)