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豪雨災害5年 父が行方不明の長山亮さん「息子に命の尊さ伝える」

「息子に生きる尊さを伝えたい」と話す亮さん

 【清水】台風10号の豪雨による久山川の氾濫から5年。清水町旭山地区でログハウスごと流され、行方不明となった長山誠教(とものり)さん=当時(63)=は、今も見つかっていない。帯広市で人材派遣会社を営む長男亮さん(46)は重機の免許を取得し、手掛かりを捜してきたが、「自分の手では(父を)捜せないこと、災害が起きたこと、すべて仕方ない」と打ち切った。ただ、「自分の息子とあの場所に行き、生きることの尊さを伝えたい」。自身も一人の父親として、誠教さんがいない今と向き合っている。(石川彩乃)

 亮さんは幼い頃、両親が離婚し母子家庭で育った。「父親とは何かを知りたい」と、中学を卒業してすぐの2年弱、誠教さんと共に生活した。ただ、「親戚のおじさんと一緒に過ごしているような感覚だった」。誠教さんの存在は今も「自分の“父”であることは理解しているが、“家族”とは違う」と言う。

 それでも捜し続けたのは「母が愛した人だったから」。亮さんの母は豪雨災害の前にがんで亡くなっていたが、誠教さんと1年ほどはログハウスで生活していた。「父が見つからなくなってすぐ『仕方ない』の思いはあった。ただ、母を思うと、父を捜すことが自分の中での正解だった」

 誠教さんを捜すことをやめた今、災害とどう向き合っているのか。亮さんは時折、言葉を詰まらせながらも「一番不幸なのは、くじけてしまうこと。日々泣いてうつむくことは、良いことではない」と話す。「父がいたから息子がいる。(息子には)生まれて良かったなと感じられるような生き方をしてほしい」。亮さんはそんな思いを胸に、小学6年になる長男を連れ、ログハウスがあった現場に足を運んでいる。

 「5年たとうが、できることをする」。豪雨災害から1年後の2017年8月、取材に、亮さんはそう答えた。

 「父を捜すこと」は一区切り付き、愛する息子に「生きていることは当たり前じゃないんだ」と伝え続けている。「今を生きている人が一生懸命に生きていないと駄目だな」-。

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