あす東京パラリンピック開幕、帯広出身の小野智華子選手3種目に出場、3大会連続入賞に期待
東京パラリンピックが24日に開幕し、帯広市出身の視覚障害スイマー小野智華子選手(26)=あいおいニッセイ同和損保、帯広盲学校出=が世界最高峰の舞台で視覚障害S11クラスの3種目に出場する。女子100メートル背泳ぎでロンドン(2012年)、リオ(16年)と2大会連続8位入賞している小野選手の3大会連続入賞に期待が高まる。
今大会で小野選手は50メートル自由形(27日に予選と決勝)、100メートル背泳ぎ(28日同)、100メートル自由形(9月3日同)の3種目に出場。コロナ禍の中、地元・帯広のプールで泳ぎ込んできた成果を発揮する。
全盲の小野選手は01年(当時帯広盲学校小学部1年)に帯広で指導を受けて水泳を始め、小学生時代から国内トップクラスで活躍してきた北海道の視覚障害パラ競泳の先駆者。十勝の一般の運動施設でパラスポーツが行えるようになるきっかけもつくった。(横田光俊)
◆小野智華子選手インタビュー
東京パラリンピック競泳競技(会場は東京アクアティクスセンター)に、ロンドン大会(2012年)リオ大会(16年)に続き3大会連続で出場する帯広出身の小野智華子(26)=あいおいニッセイ同和損保、帯広盲学校出=は、コロナ禍の中で練習環境を確保するため、幼少期からの練習拠点・帯広の森市民プール・スインピアで昨年から、地元の支援を受けながら大舞台に向けたトレーニングを重ねてきた。東京大会への意気込みなどを聞いた。(横田光俊、助川かおる)
悔しさ残る2大会
-ロンドン、リオの両大会で得たものは?
(初のパラリンピック出場の)ロンドンは、(興奮して)本当に何も覚えていない。ただ悔いが残ったのは100メートル背泳ぎで決勝のタイムが予選より遅かったこと。リオ大会は、ひたすら楽しかった。選手村で同室だった森下友紀さん=S9(手足欠損など)クラスのバタフライ種目の選手、千葉県出身=と盛り上がれた。活気のある大会で、会場は満員。レース前に「静かにして」とアナウンスがあるほどだった。ここでも悔しかったのは、また(100メートル背泳ぎで)決勝が予選より遅かった。東京大会は(100メートル背泳ぎで1分21秒07の自己ベストを超える)自己新を出してこの悔しさを晴らしたい。
リスク避け帯広へ
-昨年からコロナ禍で練習が大変だったと思うが。
(2018年のアジアパラ大会、パンパシフィックパラ水泳大会でメダルを獲得後)今現在の国際大会の経験が積めていないが、リスクを背負うことは回避してきた。帯広で母(薫さん)、タッパー(視覚障害選手が壁に近づいたことを知らせるために棒で選手の体をたたく役割の補助者)の小岩美喜子さん、貝塚英子さんらのお手伝いを得て練習ができたことに感謝している。
-仕上がり具合は?
まだ良くはない。やれるところまでやるしかない。本番までに(好調な状態に)持っていく。
障害の壁なくす
-コーチと良い出会いがあったとか。
18年のパンパシフィックパラ水泳大会で現地コーディネーターだった石川明日香さん(元競泳選手、豪州在住)と出会って、意気投合した。人間的に私と似ていて、負けん気が強くて意志が強い一方で、とても繊細。豪州から練習メニューがメールで送られて、タイムをこちらから送る。「おそ(=遅い)」と、どくろマークと共に返事が来る。「何年も前から知り合っていた感じがする」と言ってもらえるほど。石川さんのためにも頑張りたくなる。
-帯広の森市民プールでは、小野選手の練習を子どもやお年寄りが見て「自分たちも頑張ろう」と励みにしている姿をよく見る。
そのように思っていただけると本当にうれしい。
-東京パラリンピックの大会の意義をどう考えるか。
大会が開かれることで、障害者と健常者との間の壁が少しでもなくなっていけばと思う。新型コロナウイルスで感染者や亡くなる方がなくなっていくことを願っている。
18年パンパシパラでは金五つ
<おの・ちかこ>
未熟児で生まれ、未熟児網膜症で全盲に。家族の支えで水泳、トライアスロン、登山などにも挑戦、帯広盲学校小学部1年生時から始めた水泳では6年生時に出場したジャパンパラリンピック100メートル背泳ぎで世界ランキング5位をマークして日本のトップ選手になった。北京パラリンピック(2008年)を目指したが同種目が除外されたため断念。道高等盲学校(現・北海道札幌視覚支援学校)3年生時にロンドンパラリンピックに初出場、4種目で泳ぎ100メートル背泳ぎで8位入賞。筑波大学付属視覚特別支援学校に進学。16年、あいおいニッセイ同和損保(東京)に入社。同年のリオパラリンピックでも4種目に出場し、100メートル背泳ぎで2大会連続の8位入賞を果たした。18年のアジアパラ大会(インドネシア)ではリレーを含め金・銅二つのメダル、同年のパンパシフィックパラ水泳大会(豪州)では金五つを含む六つのメダルを獲得。あいおいニッセイ同和損保では、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師の国家資格を生かして社員の健康維持の業務にも就いている。
<小野選手が出場する種目の日程>
▽女子50メートル自由形S11クラス=27日(予選・午前9時~11時10分の時間帯、決勝・午後5時~8時半同)
▽同100メートル背泳ぎ同=28日(予選・午前9時~11時35分同、決勝・午後5時~8時40分同)
▽同100メートル自由形同=9月3日(予選・午前9時~11時35分同、決勝・午後5時~9時同)
<小野のパラリンピック2大会での記録>
◆ロンドン(2012年)
◇50メートル自由形 予選 35秒80・予選敗退
◇100メートル自由形 同 1分18秒91・同上
◇100メートル背泳ぎ 同 1分27秒10・予選通過
決勝 1分27秒55・8位入賞
◇200メートル個人メドレー 3分23秒34・予選敗退
◆リオデジャネイロ(16年)
◇50メートル自由形 予選 36秒71・予選敗退
◇100メートル自由形 同 1分16秒45・同上
◇400メートル自由形 同 5分57秒78・同上
◇100メートル背泳ぎ 同 1分25秒36・予選通過
決勝 1分25秒40・8位入賞