コロナ禍で会えない夫へ120通余りのラブレター 幕別の坂木さん
【幕別】「胡瓜(きゅうり)の粕(かす)漬けを作ります。永光(ながみつ)君にも食べさせてあげたい」「寒くなってきたので風邪はお互い気をつけようね」-。幕別町の坂木多重子さん(78)は、コロナ禍で面会ができない状況が続く中、町内の施設に入所する夫の永光さん(72)に1年以上にわたり手紙を送り続けている。暮らしのささいな出来事や子どもの話題などをしたためた“ラブレター”は120通を超えた。
多重子さんは29歳の時に男の子1人を連れて永光さんと再婚。2人の間にも男の子1人が生まれた。永光さんは60歳前に脳梗塞を患って車いす生活となり、2017年2月、地域密着型介護老人福祉施設コムニの里まくべつに入所した。
多重子さんも同施設の小規模多機能型居宅介護支援事業所の通いサービスを利用しており、コロナ前には週2回、施設内で昼ご飯を一緒に食べるのが楽しみだった。感染防止のため、同施設は昨年2月下旬から入所者への面会を禁止に。昨年のゴールデンウイーク明けには予約制で可能となったが、同7月から再び禁止している。
面会ができなくなって以降、多重子さんは週2回、自身の通所の際に必ず手紙を持参し、職員を通じて永光さんへ届けてもらっている。夫婦でファンというプロ野球北海道日本ハムの試合の動向や夕飯のおかず、庭の家庭菜園の様子などを思い思いにしたためる。
自身が感動した小説の粗筋をつづったことも。最近は東京五輪の話題について触れている。便箋に少なくてもびっしりと3枚、多いときは10枚以上に及び、手紙の最後は必ず「アイシテいるよ!」で締める。
永光さんの手元にたまった手紙は、多重子さんが施設から持ち帰り、大切に保管している。多重子さんは「(永光さんから)『字が乱暴だ』と言われるけど、楽しみに待ってくれている。会えないうちはずっと書いて元気づけたい」と便箋に向かう。(澤村真理子)