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保育者のマスク着用 言葉の習得に影響懸念

マスクをしたまま絵本を読む保育士(あじさい保育園)。口元の動きが読めず、子どもの発達への影響を懸念する専門家も

 新型コロナウイルスの感染防止策として保育所や幼稚園で定着したマスクの着用。しかし、口元が見えない状態が続くことで、専門家や保育現場では、言語の習得など子どもの発達に影響を及ぼすのではないかと懸念の声が上がっている。(深津慶太)

 緊急事態宣言中だった6月中旬の朝。帯広市内のあじさい保育園では、保育士が園児を前に絵本を読んでいた。「5歳以下の子どもはマスクを着ける必要が無い」とする世界保健機関(WHO)の指針もあり、園児はマスクを着けていない。一方で、保育士はマスク着用が原則だ。マスクをしたままでも表情や声を大きくして感情や言葉を伝えようとする。

 ただ、マスクを外さないと伝わらないこともある。ある保育士は食べ物を題材にした絵本を読む時はマスクを下げ、声を出さずに食べるしぐさを見せる。松山久子園長は「1人の保育士が試すと、他の保育士が読む時に子どもたちはマスクを下げにくる。大人の表情を見たがっているのではないか」と感じている。

 子どもの発達に詳しい専門家は、言葉の理解には音声だけではなく、マスクで隠れた口の動きが欠かせないと指摘する。

 北海道大学大学院教育学研究院(札幌)の川田学准教授(発達心理学)は「生後10カ月ごろまでに、喃語(なんご)レベルで母語の特徴を学習する意味では特に重要だ。さらに3歳ごろまでは、音声だけで理解するのが難しいことも多いと思う」と話す。

 また、保育時間が長時間化していることで、「日中の活動的な時間の多くを保育所で過ごす3歳未満の子どもは多い。表情に接する経験が足りているかどうか不明だ」と心配する。

 川田准教授は対策として、絵本の読み聞かせや離乳食を与えたり屋外で遊んだりする場面に限定し、表情が見える飛沫(ひまつ)防止性能の高い透明マスクの着用を勧めてきた。ただ、「今春以降、感染力が高い変異株の状況を見ると楽観できない」という。

 帯広市は昨年夏、市立保育所で透明なマウスシールドの着用を試行したが、保育所でクラスター(感染者集団)が発生したことを受け、使用を取りやめた。市内のある保育園の園長は「屋外で遊ばせていた保育士のマスクがずれていたと苦情が寄せられることもある」と打ち明ける。現場では発達への影響を懸念しつつも、感染対策の徹底に追われるというジレンマに陥っている。

 川田准教授は緊急事態宣言解除後、場面を限定した透明マスクの着用に期待する。「園と保護者の関係は学校よりも密。連絡帳や送迎時の立ち話などを通じて、子どもの発達に与える表情の影響を伝え、園としてのマスク着用の方針について理解してもらうことが大切」と話している。(深津慶太)

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