十勝のPCR件数少ないのはなぜ? 背景に感染患者が多い地域ほど件数多くなる図式
新型コロナウイルスに感染した疑いのある人や感染患者に対して行われるPCR検査について、「十勝の実施件数は少な過ぎるのではないか」との声が住民から上がっている。今月11日までに管内で実施されたPCR検査の件数(道感染症危機管理対策本部集計値)は44件。これに対し、近隣の釧路管内は282件、オホーツク管内は226件に上っているためだ。
数値上で十勝の検査件数が少ないのは歴然。ただ、これには国や道の検査基準が絡み、「十勝で陽性判定が出た患者が少ないからこそ、検査件数も小規模にとどまる構図がある」(道関係者)という。
現在、日本国内では限られた検査能力に対して、重症化する兆候のある人を助けたり、クラスター(感染者集団)の発生を未然に防いだりすることを最優先にPCR検査が行われている。このため、検査を希望する全ての人に対して検査を実施できているわけではない。
さらに道の検査基準に詳しい関係者によれば、PCR検査は(1)陽性判定が出た患者の経過確認(2)濃厚接触が疑われる人が発熱した場合(3)感染の疑いがある人で肺炎が重症化する恐れがあるケース-の順に優先度が決められているという。
新型コロナウイルスに感染して感染症指定医療機関に入院した患者は、退院までに2回続けて「陰性」が出るまでPCR検査が繰り返される。また、感染患者の周辺で発熱者が出た場合にも優先して検査が行われ、検査の実施件数が積み上がる図式だ。
11日時点で感染患者が1人の十勝に対し、オホーツクは28人、釧路は12人の感染事例がある。
一方、同様に検査件数が43件にとどまる根室管内は感染事例も1人のみとなっている。「陽性患者が増えれば増えるほど、雪だるま式に検査件数が増える」という説明はつく。
ただ、SNSなどでは「風邪の症状や発熱が続いているのに、検査を受けさせてもらえなかった」「おかしい」という声もまん延している。未知のウイルスの恐怖に対し、「自身や家族も感染しているのではないか」という不安が広がっているのが現状だ。(奥野秀康)
<PCR検査>
患者から粘膜や痰(たん)などの検体を採取し、ウイルスの有無を確認する検査。結果判明までに数時間かかると言われ、検体を道立衛生研究所まで輸送する十勝の場合は数日間を要する。
十勝毎日新聞社は、新型コロナウイルスの感染の有無を判定するPCR検査について情報を募るアンケートを本紙電子版で実施しています。検査を受けた、疑われる症状があって医療機関を受診した、保健所に相談したなどの実体験を持つ方の回答をお願いします。
アンケートは、十勝毎日新聞電子版に掲載の記事「教えて!ぴぴっと『PCR検査は、どうすれば受けられるの?』」(無料公開中)のページにあります。