娘たちの金に万感の思い 高木姉妹家族が現地で声援 平昌五輪
【韓国・江陵】幕別町出身の高木菜那選手(25)=日本電産サンキョー-帯南商高出=と妹の美帆選手(23)=日体大助手-日体大、帯南商高出=を主体とした日本がスピードスケート女子団体追い抜き(チームパシュート)で五輪新記録による金メダルを獲得した。現地の江陵オーバルで観戦した父愛徳(よしのり)さん(60)や母美佐子さん(55)、兄大輔さん(27)は姉妹の幼き日に思いをはせながら、最高の勲章をつかんだ2人に胸を熱くしていた。
今大会の女子個人種目で4つの「金」を含む7つのメダルを獲得しているスケート大国オランダとの決勝。1500メートル「銀」、1000メートル「銅」の美帆選手を中心に菜那選手、佐藤綾乃選手(高崎健康福祉大-釧路北陽高出)で挑んだ。
そろいの青いTシャツに身を包んだ家族や姉妹の友人らが「行け!」「頑張れ!」と声援を送る中、高木姉妹を不動のメンバーに今季ワールドカップで世界記録を3度更新している日本の“3人娘”が、終盤に逆転して歓喜のゴール。悲願の「金」に家族や会場の日本人らが喜びを爆発させた。
姉妹はともに札内北小学校1年のときに十勝管内の大会で優勝。それから歳月を経て、世界最高の舞台で表彰台の真ん中に立った。美佐子さんは「あの頃を思い出すと長かったような、短かったような…。きょうは娘たちのうれしい笑顔が見られた最高の日。2人や支えてくれた皆さんにありがとうと言いたい」と万感の思い。
愛徳さんは「4人のチームワークで頑張ったレース。日本に勇気を与えたと思う。苦しい練習を乗り越えた結果におつかれさま、よく頑張ったと声を掛けたい」、大輔さんは「感動した。自分たちらしいレースが頼もしかった。やっと100%のガッツポーズが見られてよかった」と2人が喜ぶ姿を見て、うれしそうに目を細めた。
両親は姉妹が小さいころからスピードスケートに加え、サッカーやヒップホップダンスなどやりたいことを尊重し、伸び伸びと育てた。ただ「やりたいと言って始めたからには『つらいから今日は行かない』ということはさせなかった」(愛徳さん)と自分で決めたことは必ず守らせ、成長につなげた。
愛徳さんは以前、「うちの子に何色のメダルを取ってほしいかは僕が望むことじゃない」と話した。それよりも、言動や態度を含めて「若い子たちの見本となるような選手になってほしい」と願っていた。
現地では「北海道・札幌冬季オリンピック・パラリンピック招致を応援する会」(会長・高橋勝坦帯広商工会議所会頭)や中札内村教委の派遣事業で訪れた十勝の中学生計10人が歴史的な瞬間を見届けた。「姉妹でメダリストはすごい。うちはきょうだい5人が全員スケートをやっているので、いつか自分たちもと思う。私も人に感動を与える選手になりたい」と堀川桃香さん(大樹中2年)。
スピードスケートに懸命に取り組む十勝の“金の卵”たちにとって、高木姉妹は輝く指針となった。(松村智裕)