五輪本番想定タイムトライアル 高木姉妹ら順調な仕上がり 長野
【女子３０００メートル】タイムトライアルで快調な滑りを見せる高木美帆（金野和彦撮影）
【長野】来月９日に開幕する平昌冬季五輪を前に、スピードスケートの日本代表選手壮行タイムトライアルが１９日、長野市のエムウェーブで行われた。午後８時に競技を始めるなど本番を想定。女子中距離でメダルが期待される高木美帆（日体大助手、帯南商高出）や姉の菜那（日本電産サンキョー、同高出）、押切美沙紀（富士急、中札内中出）が女子３０００メートルに、長谷川翼（日本電産サンキョー、白樺学園高出）、郷亜里砂（イヨテツ、同高出）と神谷衣理那（高堂建設）が５００メートルに出場した。
１９日から２１日まで実施中のワールドカップ（Ｗ杯）エアフルト大会（ドイツ）は時差があるために回避し、実戦感覚を養うためにタイムトライアルを実施した。ミズノと日本スケート連盟が共同で開発した五輪用の新しいレーシングスーツに身を包んだ選手たちは、英語でのアナウンスや音楽、録音した歓声が流れる中、慣れない夜のレースを滑走した。全体的にタイムは低調だったが、選手たちの表情は明るかった。高木美は「日中の過ごし方が難しいと思った。とても良い経験になった。万全でない状態だったが、滑りの感触はまずまず」と話した。
タイムトライアルは２０日夜も男女の団体追い抜きなどを実施する。（北雅貴、金野和彦）
「夜」苦手じゃない 高木美
高木美帆は唯一、ラップを３４秒台に落とさずに滑りきった。昨年１２月末の五輪代表選考会よりも約４秒遅い４分１０秒５０。「選考会よりはリズムが良く、落ち着いていた。夜のレースも苦手だなとは感じなかった」と冷静に話した。
今月２日から宮崎合宿で陸上トレーニングを行い、１週間ほど前から氷上に戻ったばかり。「まだうまくいっていないが、良い方向には向いている」と、順調な調整に笑みもこぼれる。
五輪の３０００メートルは２日目の１０日に行われる。本命は第４日の１５００メートルだが、「（３０００メートルは）スピードスケートだけでなく日本代表としても最初の方のレース。全力で挑み、いい流れを持ってきたい」と力を込めた。
小首かしげる 押切
「調整中とはいえ、もう少し良いレースをしたかった。どこが悪いかコーチと話し、今後につなげていきたい」。３０００メートルに出場した押切美沙紀（富士急－駒大苫小牧高、中札内中出）は小首をかしげながらも前向きに話した。
いつも通り積極的に飛ばしたが、１４００メートル以降はラップを３４秒台に落とした。五輪に出場する女子５０００メートルも午後８時に始まる。夜のレースに関しては「慣れてはいないが、この時間だから体が動かなかった感じではない」ときっぱり。残り期間でしっかりと準備し、全力を出し切ることを誓った。
「滑り上向き」 高木菜
高木菜那は３０００メートルで６選手中４番目の４分１７秒６２にも「タイムは悪かったが、滑りは少しずつ上向き。やっと体が動いてきた。ポジティブにとらえている」と、はきはきした口調で話した。
この日は昼食後からの時間の使い方に戸惑った。睡眠を取り、過去のレースを見て、仲間やコーチらと談笑した。「少しリラックスし過ぎたのかな。氷上のアップも少なく、右膝もまだ温まっていなくて少し痛かった」と、今後の課題を口にした。
「体動いた」 長谷川
長谷川翼（日本電産サンキョー－日大、白樺学園高出）は加藤条治（博慈会）と同走で、３５秒１４とまずまずのタイム。「思った以上に体が動いて、いい練習になった」と、代表選考会を３４秒６０の国内最高記録で制した若き日本のエースは自信を漂わせた。
「金メダルを取るためにはまだまだ速くならないといけない」。選考会の記録に満足することなく、ピッチを上げて歩数を増やすフォームへ改造中だ。最初の５０メートルから１００メートルまでの５０メートルで足の回転数を上げ、バックストレートでは１０歩から１２歩へ模索。「手応えはある。精度を上げて効率よく滑ればもっとタイムは良くなる」と話した。
「緊張感あった」 神谷
郷亜里砂（イヨテツ－山梨学院大、白樺学園高出）と神谷衣理那（高堂建設）はペアで滑走した。２人とも動きは重かったが、郷は残り１００メートルで先行する神谷をとらえて逆転。代表選考会で見せた後半の力強さをうかがわせた。
スプリントチームは起床時間を２時間ほど遅らせ、午後９時ごろから自転車トレーニングで汗を流すなど夜型のリズムに移行しつつある。郷は「今回で何となく分かった気がする。記録に関してはきょうの滑りではこのぐらいしか出ないだろうなという感じ」と苦笑いを浮かべた。
神谷は関係者に感謝。「いつものタイムトライアルとは違うオリンピックをイメージしたレース。緊張感があった。準備をしてくださった方々のおかげです」と頭を下げた。
前傾姿勢サポート 新スーツ
平昌五輪で日本代表が着用するレーシングスーツが初めてお披露目された。肩から胸部、腹部、背中部の体幹部分や太ももなどに伸び縮みしにくいウレタンラミネート素材を使用。４年前のソチモデルより同素材を３５％から５５％に増やしたことで、体幹を安定させ滑走時の前傾姿勢などをサポートする。
製作したミズノは、日本スケート連盟と話し合い、選手らの要望に対応しながら開発した。デザインコンセプトは「栄光への光」。太もも部にある「ＪＡＰＡＮ」は金色に輝く。高木美帆は「体に少しずつなじんできた。布の余計な余りもなく風の対抗が少ない」とし、「このワンピースを着こなせるような格好良い選手になりたい」と笑った。
（４位以降は関係分と五輪出場者）
【男子】
▽５００メートル
（１）長谷川翼（日本電産サンキョー－日大、白樺学園高出）３５秒１４
（２）羽賀亮平（同－同大、同高出）３５秒３５
（３）加藤条治（博慈会）３５秒４２
（４）村上右磨（村上電気）３５秒５１
（５）後藤卓也（福井県体協－日大、帯農高出）３５秒６１
（７）大和田司（味のちぬや－北翔大、白樺学園高出）３５秒８７
（９）森本拓也（三重県体協－日体大、池田高出）３６秒４３
▽１５００メートル
（１）小田卓朗（水戸開研）１分４８秒０９
（２）ウイリアムソン師円（日本電産サンキョー）１分４９秒０３
（３）中村奨太（ロジネットジャパン）１分４９秒０８
（８）池田崇将（福井県体協－専大、白樺学園高出）１分５３秒５０
▽５０００メートル
（１）土屋良輔（メモリード）６分３３秒３３
（２）一戸誠太郎（信州大）６分４４秒５４
【女子】
▽５００メートル
（１）郷亜里砂（イヨテツ－山梨学院大、白樺学園高出）３８秒３６
（２）神谷衣理那（高堂建設）３８秒５５
（３）樋沙織（日本電産サンキョー）４０秒３３
▽３０００メートル
（１）高木美帆（日体大助手－日体大、帯南商高出）４分１０秒５０
（２）佐藤綾乃（高崎健大）４分１５秒１１
（３）押切美沙紀（富士急－駒大苫小牧高、中札内中出）４分１７秒３０
（４）高木菜那（日本電産サンキョー－帯南商高出）４分１７秒６２
（６）菊池彩花（富士急）４分２２秒４６
