十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

情熱込めた「十勝の宝石」エテュデイエ 池田

「池田町ブドウ愛好会発祥の地」でエテュディエを手にする田辺さん(右)と廣瀬さん

 【池田】十勝ワイン創始者で元池田町長の故丸谷金保さんの命日の3日、町ブドウ・ブドウ酒研究所から最高級赤ワイン「エテュディエ2014」が発売された。丸谷さんの次女で総合ワインコンサルタントの田辺由美さん(63)=東京=が企画立案、前・同研究所技術専門指導員の廣瀬秀司さん(65)らと共に造り上げ、「十勝の宝石」とのキャッチコピーが付けられた。田辺さんと廣瀬さんに話を聞き、醸造の道のりを振り返った。

 ワイン造りは2014年10月20日、町千代田の町営ブドウ畑での「山幸」の収穫からスタートした。山幸は十勝ワインの礎となった山ブドウ「アムレンシス」の血を受け継ぎ、同研究所が独自に開発した耐寒性の品種。「父は晩年、アムレンシスを超えるワインができていないと嘆き、十勝ワインの将来を心配していた」と田辺さん。山幸のポテンシャル(潜在能力)を引き出すことへの挑戦が始まった。

 田辺さんはワイン業界に入って30年以上。世界各国を回って知識を身に付けてきたが、実際にワイン造りを手掛けたのは初めて。製造全般を担当した廣瀬さんと話し合いを重ねた。「レストランで打ち合わせをしていた際、周りがびっくりするような大声で意見交換したことも」と笑う。

 醸造過程では「青臭い」「酸が強い」といった山幸のマイナス面を取り除くことに最も力を入れた。選果の際には、青臭さの原因となる梗(こう=実に付いている小さな枝)の除去を徹底。機械での処理は1時間に20トンだが、選果システムを導入して手作業で処理したため、1時間0・5トンと時間をかけた。

 ワインを移し替えるときに、ポンプは使用しなかった。廣瀬さんは「ポンプを使うと空気が入り、酸化を招くため、バケツリレーを行った。樽(たる)に注ぐときもチューブを樽の底に近づけ、空気が入らないように気を配った」。「手作業で機械に頼らず、妥協をしない姿勢が品質に現れた」と振り返る。

 ワインは昨年12月にフレンチオークの新樽に詰めて約1年間熟成し、2月に瓶詰めされた。出来について田辺さんは「インクやコショウのような香り、新樽のアーモンドのような香りが調和し、口の中に柔らかなタンニンと、酸に裏付けされたフレッシュでエレガントな味わいが続く」と評する。さらに「10年、20年と置いて熟成された味を楽しんでほしい」という。

 収穫や選果などの作業には田辺さんのワインスクールの生徒、十勝ワイン友の会、同研究所OBら約30人が協力。田辺さんは「父は『ワイン造りは人づくり』と話していた。エテュディエは廣瀬さんをはじめ、集まった人たちの情熱が込められたたワイン。世界に誇れるワインが完成したと確信している」と話す。

 また、「父や私、廣瀬さんの思いが受け継がれ、十勝ワインの次世代の頑張りを見届けたい」とも。エテュディエのラベルには元町長への敬意を込め、フランス語で「オマージュ」の文字が記されている。(末次一郎)

更新情報

及川慎二がパワーリフティング道最高記録750キロ達成、治療院の支えで驚異の復活

紙面イメージ

紙面イメージ

5.4(土)の紙面

ダウンロード一括(47MB) WEBビューア新機能・操作性UP

日別記事一覧

前の月 2024年5月
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

十勝の市町村

Facebookページ

記事アクセスランキング

  • 昨日
  • 週間
  • 月間

十勝毎日新聞電子版HOME