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孫への愛を形に イノタニに陶壁画

孫の手形に手を重ねる槇子さんと、制作した鈴木さん(手前から。折原徹也撮影)

 帯広市内の造園業「イノタニ」(西5南30、猪谷直樹社長)が、社屋横に今シーズン開設したオープンガーデンに、人の手形などをあしらった陶壁画がある。猪谷社長の母槇子さん(79)が、6人の孫をはじめとする家族への深い愛を形にしたものだ。槇子さんは、壁画を見た人それぞれが、家族に対する愛情を見詰め直してくれることを願う。

 きっかけは3年前、槇子さんが庭の小屋を整理していたところ、孫たちの手形の陶器を見つけた。10年前に帯広市図書館に寄贈した陶壁画を制作する際に作られたものだった。図書館への寄贈は、夫で先代社長の一彦さん(故人)の「孫の代まで残り、来た人の癒やしになるものを図書館に贈りたい」という遺志を継いで行った。下はまだ赤ん坊だった孫たちの手形を10年ぶりに目にした槇子さんは、当時を思い出すと同時に「このままうずもれさせず、何らかの形で未来に残したい」と思い立った。

 槇子さんは、図書館の作品を制作した清水町在住の陶壁画作家鈴木のり子さん(70)に相談。2人で話し合いながら、壁画のイメージを練り上げてきた。オープンガーデンを造ることは猪谷社長の発案。壁画のキャンバスとなったオブジェも、猪谷社長が槇子さんのために用意した。

 出来上がった作品は、中央に母性の象徴「月」を配置。周りを6人の孫の手形が囲む。その手は月からの愛を求めるようにも、月を支えるようにも見える。槇子さんは「私が亡くなった後も、孫たちが私のことを思い出しながら、いつまでも仲良くいてもらいたいという願いを込めた」と説明する。手形同士をつなぐ線は、「助け合う気持ちや気の流れを表した」(鈴木さん)という。

 周囲にちりばめられた陶片には「生きる」「努力」「愛」「え顔」などの文字。槇子さんが孫に伝えたい思いをしたためた。「実る」「はる」「一柏」などの言葉は、亡くなった先々代夫妻や一彦さんの名前から取った。親や祖父母がいて自分があることをさりげなく伝える。

 ガーデンにはバラやハーブなどが植えられ、間もなく草花が陶壁画を囲んで一体となる様子が見られそう。鈴木さんは「自然の中で全てが共存して愛を授かる夢の世界を残したいという、槇子さんの思いをアートで表せた。ここは愛のみの空間」と作品を言い表す。

 ガーデンは自由に見学することができる。槇子さんが滞在時は、ハーブティーなどを振る舞う予定。槇子さんは「自己満足かもしれないけど、殺伐とした世の中だからこそこれを作りたかった。ここで一息ついて、家族のことを思いながら癒やしを感じてもらいたい」と望んでいる。
(丹羽恭太)

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  • 孫への愛を形に イノタニに陶壁画  2

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