学習症支援する会発足 3月に映画上映会
発達障害に詳しい道立緑ヶ丘病院(音更)の長沼睦雄医師らが、「学習症の子どもたちの学びを支援する会」を立ち上げた。ITを活用して学習症の子供のサポートを目指し、啓発活動にも力を入れる。3月には会発足第1弾事業として、学習症の当事者を追ったドキュメンタリー映画の上映会を開く。
学習症と診断される子供は、発達障害の中でも広汎性発達障害や注意欠陥多動症に比べて少ないとされてきた。しかし、文科省が2012年に行った調査では学習症が最も多く、小・中学生の4・5%が該当した。長沼医師は「学習症に対する理解が進まないため支援が遅れ、支援がないため診断するメリットがなく、診断する医師も少ない」と背景を説明する。
知能が遅れているわけではないため、障害が理解されづらく、当事者や家族でさえ無自覚な場合もある。学習支援がないまま学校で苦労したり、社会に出てからトラブルに遭ったりすることも少なくないという。
近年はタブレットなどIT端末を使って学習症の子供を支援する取り組みが注目されている。同会でもITを活用した支援を進めたい考えで、長沼医師は「苦手なことはタブレット教科書を使うなどして補い、芸術や体育など得意なことを伸ばせれば」と話す。
発足メンバーの1人で当事者家族の井口百合香さん(帯広)は、「発達障害を持つ人の中にはITに強い人も多い。それぞれが優れていることを生かし、それぞれの能力を引き上げていくような活動をしていきたい」としている。
会の体制や具体的な活動などは会員を募りながら検討していく予定。長沼医師は「まずは学習症に関する勉強会として始めていきたい。当事者、家族、学校の先生など興味のある人に広く参加してほしい」と呼び掛けている。問い合わせは井口さん(090・7210・0657)へ。(丹羽恭太)
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ドキュメンタリー映画「ディスレクシア(DX)な日々」(2011年、日本)の上映会は3月1日午前10時半からと午後2時からの2回、あがり框(帯広市西10南5)で開かれる。
ディスレクシア(読み書き障害)は学習症の中心的な症状。作品では当事者の“美んちゃん”こと砂長宏子さん(東京)が、障害を理解することで前向きに生きる姿を描いている。長沼医長の講話や砂長さんとの交流の時間もある。
参加費は一般1300円(前売り1200円)、当事者、中・高生500円。申し込み、問い合わせは井口さんへ。
<学習症>
発達障害の一種で、読み書きや話す、聞く、計算などが苦手。一方で空間認知能力や表現力などにたけている場合も多い。欧米では学習症の認知度が高く、ハリウッド俳優のトム・クルーズなど著名人も学習症であることを公表している。日本精神神経学会が昨年5月に、学習障害から名称を変更した。