トムラウシ遭難事故から5年 再発防止へ啓発活動
新得町などにまたがる大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で本州のツアー登山客ら9人が犠牲になった遭難事故から、16日で丸5年を迎えた。日本の夏山史上最悪の惨事は関係者の間で大きく注目されたが、登山ブームの中で、百名山の一つでもある名峰を目指す登山者は今も多く、事故の再発防止が強く求められている。
2009年の事故では、東京の旅行会社「アミューズトラベル」(12年に旅行業取り消し処分)が主催する縦走ツアーに参加した、本州からのツアー客15人とガイド3人の計18人のパーティーが遭難。客の男女7人(当時59~69歳)と、ガイド1人=当時(61)=が低体温症で死亡。同日、別の単独登山者1人も死亡した。
ツアーのパーティーの遭難については、無謀な計画や過酷な気象条件下でツアーを続行したガイドの判断、参加者の技量不足、装備の不備などさまざまな原因が指摘されている。道警は業務上過失致死容疑での立件を視野に捜査を進めている。
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節目を迎えた16日早朝、新得側の短縮登山口には30台近い車が並んでいた。自転車で日本一周旅行中の利光健志さん(23)=大分=は、旅先で知り合った登山経験者2人と一緒に入山の準備を進めていた。「僕自身は登山初心者。山は怖さもあるけど、それが楽しさだと思う」と話した。
事故前から毎年、同山に登っているという幕別町の工藤敏子さん(60)は山仲間3人で入山。「相変わらず無謀な登山者はいる。山登りが初めての彼女を連れてきていた若者がいて驚いたこともある」と、事故の再発を懸念していた。
同日午前3時からは新得署員4人が同登山口で、事故防止のための啓発活動を行った。署員は登山者に対して、道警ホームページ「安全登山情報」を紹介するチラシなどを配布しながら、「天候が悪化したり体力を消耗したりしたら、『せっかく来たから』と思わずに引き返して」などと呼び掛けた。
(丹羽恭太)
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