カチバス帯広公演、満席の観客が大きな拍手
十勝バス(帯広市)をモデルに、十勝や北海道ゆかりの役者が演じるミュージカル「KACHI BUS(カチバス)」の帯広公演が14日、帯広市民文化ホールで開かれた。地元十勝の地名や北海道弁も飛び出すコミカルな進行、人情味あふれる物語が観客の笑いと涙を誘った。初日は約1500人が詰め掛け、カーテンコールでは大きな拍手が鳴り響いた。15日も開かれる。
物語は会社倒産の危機からの復活劇。父親からバス会社を引き継いだ若手社長が、社員とぶつかりながらも、近隣住民を個別訪問するなど試行錯誤を重ね、利用者を伸ばしていく。森崎博之さん(TEAM NACS)が野村文吾社長(50)役を演じ、帯広三条高校出身の小野寺昭さん(父親役)と近江谷太朗さん(部長役)も出演した。
初日の公演は午後7時から行われ、サラリーマンや若い女性、親子連れなど幅広い年代の観客が客席を埋めた。野村社長や同社社員が来場者を出迎えた。
公演ではせりふに「広小路アーケード」「冬はマイナス20度」などの他、地場スーパーの名前も飛び出すなど、地元開催ならではのアドリブで観客を楽しませた。終演後、カーテンコールに現れた森崎さんは「多くの人の支えで帯広公演を実現できた。僕らにとって大きな奇跡」と感無量の表情を見せ、小野寺さんは「地元で照れくささもあったが、幕開け後は演技に集中した」、近江谷さんは「万感の思いで挑んだ。自分自身の故郷への思いを改めて気付かされる作品となり、感謝している」と話した。
帯広市の公務員石田香織さん(37)は「社会人として、できることから頑張ろうという気持ちになった」、芽室町の農業三井拓広さん(50)は「地元の話題で親しみが持てた」と感想を語った。客席で涙をぬぐった野村社長は「十勝の人に、発展していくことを宣言したのと同じ。バス事業は簡単でないが、応援してほしい」と述べた。15日の公演は午後1時から行われた。
同公演は1月に東京、今月12日に札幌で開かれ、いずれも満員の観客を集めた。一方、今月1日に主催団体(アトリエ・ダンカン)が事業を停止。出演者が帯広で異例のプロモーション活動を展開し、帯広公演のチケット完売に結び付けた。(山岡瑠美子)