訓練中に実弾誤射 数十発、隊員2人軽傷
【鹿追】陸上自衛隊北部方面総監部(札幌)は23日、北部方面後方支援隊(島松駐屯地=恵庭市)が鹿追町の然別演習場での訓練中、複数の男性隊員が空包と誤って実弾を射撃し、別の2人の隊員が軽傷を負ったと発表した。
同総監部によると、誤射があったのは同日午後3時半ごろ。車両を使って警戒態勢をつくり、行進する防衛訓練で、31人が参加していた。訓練中、複数の隊員が本来は空包を使用するところ、誤って口径5・56ミリの89式小銃の実弾を数十発撃ち、三等陸曹の30代男性の左脇腹、陸士長の20代男性の左太ももをかすり、2人は軽い傷を負った。
同訓練は、行進時に敵から攻撃を受けた場合に対処するためのもの。けがをした2人の訓練時の役割などは分かっていない。
空包は訓練を効果的に行うために用いられ、目標までの距離が20メートル以内の場合、通常は上方に向けて発射する。
89式小銃は隊員全員が持っており、実弾を使用する場合、通常は使用する直前に配布されるが、この日の訓練で実弾を使用する予定はなかった。
同総監部によると、実弾は演習場外に出た可能性もあり、場内の射撃位置や撃った方向、けがをした隊員がいた場所や距離などの詳細を調べている。
誤射を受け、秋山賢司北部方面後方支援隊長は「国民の生命、財産を守るべき自衛官がこのような事案を起こし、大変申し訳なく思っている。今後、事案発生の原因を速やかに調査し、再発防止に努めていく」と話している。
住民「安全対策徹底を」
誤射事故が起きた然別演習場(鹿追町)は24日午前、複数の自衛隊車両が頻繁に出入りし、慌ただしい雰囲気に包まれた。
同町によると、演習場に接する行政区は北瓜幕と中瓜幕、東瓜幕で、住民は計94戸が居住している。
演習場から約200メートルの距離に住む東瓜幕の酪農業の男性のもとには同日午前9時ごろ、自衛隊関係者が訪れ、「実弾は外に出ていない」と説明したという。
この男性は既に報道で事故発生を知っており、「自衛隊とは信頼関係で成り立っている。事故は注意してもあるので仕方ないが、地元に対しては早く説明すべきだ」と話していた。
約600メートルの距離に住む同地区の酪農業井端成光さん(65)は、以前にも実弾が外に出た事故があったことに触れ、「またかという感じ。これまで自衛隊と共存してきた歴史があるので『出て行け』とは言えない。だからこそ、安全対策を徹底してほしい」。
同演習場では2001年には約3キロ離れた士幌町の農家のビニールハウスで重機関銃の銃弾が発見された。07年にはロケット弾が行方不明となり、演習場の境界から北に約450メートルの山林内で発見されている。(小寺泰介、小林祐己)