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成長のため 壁よ、来い フリーアナウンサー武内陶子さんSALA講演

NHK時代のエピソードを語る武内さん

 【音更】十勝毎日新聞社が主催する女性限定会員制クラブ「SALA(サラ)」の今年度第1回講演会(6月7日、音更町文化センター)では、フリーアナウンサーの武内陶子さん(60)が「ご機嫌システムでハッピーに もっと楽しく生きるコツ」をテーマに講演した。約400人の来場者に、これまでの経験と楽しく生きるコツを語った。(文・高井翔太、写真・助川かおる通信員)

58歳で飛び出しロックに生きる
 4月17日に還暦になり、新しいページが始まった感じです。NHKで33年間アナウンサーとして勤めましたが、58歳の時にいろんなことがしたいと、野生の陶子になりたいと、飛び出すことを決心しました。私の第1章はここまで。もうちょっと山や谷があってもいいと、セカンドステージではなく第2章と位置づけ、目標は「ロックに生きる」と決めました。ロックっていうとなんでもできそうな気がしませんか。

 インスタグラマーになり、(NHKを)辞めてから1年ほどですが1000件以上投稿しています。こんなに伝えたことがあったんだと思いました。NHKにいる間にできなかったことを全部やろうと、まさにロックな日々を過ごしています。

 NHK時代は大変なこともありました。全国からいろんなご意見をいただきます。お便りはほとんどクレームでびっくりしました。

 気象予報士の平井信行さんと一緒にやっていた天気予報のコーナーでのことです。「続いて気象情報です」という原稿を「続いて平井さんのお天気です」と変えることにトライしてみました。しばらく続けているとお手紙が来ました。「うちの家族には“平井さん能天気”にしか聞こえません。どうにかしてくれませんか。気になって仕方ありません」と。いろんな感じ方をするんだと思うと同時に、息継ぎが大切だと視聴者の方から教えてもらいました。そんな形で皆さんに育ててもらった33年でした。

紅白司会の不安…過去の出会いが支えに
 紅白歌合戦の総合司会もやりました。私の時は、突然呼び出されて総合司会を担当することを言い渡されました。木曜に言われ、来週の月曜の記者会見まで家族にも誰にも言わないようにと。5時間近い生放送にもかかわらず、当時は全体が分かるのが12月26日。そこまで何の情報もありません。うれしい、名誉だなというより不安しかありませんでした。

来場者と記念撮影する武内さん

「踏み出せらい」温泉で背押され
 そんな時、地元愛媛での講演会があり、その帰りに道後温泉に寄りました。お風呂に入ると、一人のおばあさんが近づいてきて、「背中流してあげらい」(地元の方言)と、お断りする間もなくゴシゴシと流してくれました。感謝の気持ちを伝えると「気持ちよかったかい。ほんなら元気出たかい。それならあんた一歩踏み出せらい」(同)とドンと背中をたたかれました。私は普通の顔をしているつもりでしたが、相当思い詰めた顔をしていたんでしょうね。後日、「あのおばあさんはこの世の人だったのかしら」と、この不思議な体験を思い返しました。

 誰かの言葉に助けられ、どん底まで落ちたら浮上するしかないというのは、本当にそうだなと思いました。底までいくといろんな新しい考えが浮かんでくるということにも気付きました。(総合司会の時は)38歳で入局12年目くらいでしたが、総合司会をできる自分じゃないと思っていました。しかし、ふと考えてみると、過去に取材した方の顔が思い浮かんできて、自分の体の細胞の一つ一つにそういう人たちがいるようで、「私ではなく私たちだったんだ」という感じになりました。その人たちに支えられ、私にしかできないことがあるんじゃないかと。そういう気付きや出会いがあり、育ててもらいました。

次の自分への壁越える策が初心
 「100分de名著」という番組も担当しました。「風姿花伝」を書いた世阿弥(ぜあみ)は「初心」は三つあると言っています。若いだけで花という時期を過ぎて、次の自分にならなければいけないと壁にぶつかったときに乗り越える作戦を立てる、そのことが初心と言っています。

 中年になり再び壁にぶつかったときは、前の壁を乗り越えたときの作戦を思い出して新しい策を作り、乗り越えることが次の初心。歳を取ってからの体の痛みなどから来る初心もあります。壁を乗り越えることで人は成長すると世阿弥は言っています。壁を乗り越えて自分を成長させたいといつも思っています。

 そして脳の完成は56歳だそうです。7歳ごとに脳は変わり、14歳ごろまでは感性が育つ時期で勉強ばかりしていてはだめだそうです。次の7年間の21歳までは、勉強してスポンジのように取り込む時期です。経験し失敗すればするほど脳が発達し、学んでいきます。あたなにしかできなかった失敗と成長を繰り返し、とうとう56歳で「あなた自身」になるのだそうです。つまり皆さんは、それぞれの方にしか経験できなかったことを経験している、尊い存在です。それからは出力マックス期です。伝えることがとても大切です。

 同じ失敗をしたっていい。失敗し壁を乗り越えることで人間は成長していけると思うと、「壁よ、来い」と思える。私は、しんどくなったらいつもこう思っています。

 来世は子だくさん母さんの助産師のラッパーになりたいと思っていましたが、今世で双子が産めてかなってしまいました。10年やっているゴスペルでラップをひそかに練習して認められ、ラッパーになる夢もかなえちゃいました。皆さんも、ぜひ今世でかなえてください。たくさんのことを経験して失敗してください。怖がらないで。合言葉はレッツロックです。

<たけうち・とうこ>
 フリーアナウンサー。1965年愛媛県大洲市出身。神戸女学院大卒。91年にNHK入局。松山、大阪を経て東京で勤務。「NHK NEWSおはよう日本」のキャスターや「第54回紅白歌合戦」の総合司会などを務めた。現在はテレビやラジオなどで活躍中。3人娘の母。



次回は美容家・IKKOさん
 今年度第2回の講演会は9月6日(時間未定)、美容家でタレントのIKKOさんを講師に迎え、「歳を重ねても輝き続ける理由」をテーマに幕別町百年記念ホールで開かれる。IKKOさんは、美容師、ヘアメイクアップアーティストを経て、40歳から表舞台へ転身。美容家・タレントとして活躍する中、時代の流れを取り入れた生き方が老若男女問わず支持されている。美容家として数々の賞を受賞し、2024年には国際女性デー「ハッピーウーマン賞」を受賞。

 SALAは年度途中からの入会も可能。問い合わせは十勝毎日新聞社営業局内SALA事務局(0155・23・2323、平日午前9時~午後5時)へ。

更新情報

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