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体育祭の晴天願う「インカの儀式」帯一中の笹木校長

晴天を願い、民族音楽を弾き語る笹木校長(奥は石川さん、手前は遠藤さん)

 十勝管内の多くの中学校で今週末、体育祭が行われる。帯広第一中学校の笹木卓三校長は毎年、当日の晴天を願い、南米ペルーの「太陽を呼ぶアンデスの儀式」というユニークな“晴れ乞い”を披露している。民族衣装を身にまとい、歌やダンスで晴天を祈願。生徒にも好評で、笹木校長によると「晴天率は9割」と効力もお墨付きだ。25日、今年度で定年退職する笹木校長の最後の儀式が行われた。

 25日正午すぎ、体育祭の総練習が終わった第一中グラウンド。全校生徒が見守る中、鮮やかな民族衣装をまとった笹木校長と生徒会会長の遠藤美沙さん(3年)、副会長の石川航平さん(同)が登場した。

 笹木校長がペルーの公用語・スペイン語で太陽の国「インカ帝国」について紹介し、遠藤さんが通訳。その後、ギターをかき鳴らしながらボリビア民謡を弾き語り、リャマの毛が使われた太鼓を持った石川さんが演奏と踊りで盛り上げた。初めて目にする1年生はきょとんとした様子だったが、リズミカルな音色に次第に魅了され、手拍子を送っていた。

 “本場仕込み”の儀式には理由がある。笹木校長は1991年から3年間、ペルーの首都リマの日本人学校で教壇に立った。リマはほとんど雨が降らず「運動会も中止になったことがない」(笹木校長)地域。太陽神を信仰したインカ帝国が存在した国でもあった。

 91年には過激派テロで日本人が犠牲になる事件にも遭遇。当時、学校には約70人が在籍していたが、テロを恐れ帰国する生徒が相次ぎ約30人にまで減少した。運動会の開催も危ぶまれたが、渡航前に少人数の上士幌糠平小学校に勤めていた経験から、「30人いれば盛大にできる」と大使館関係者や現地企業の日本人も招き、盛大に開催。不安げに日々を過ごしていた保護者や子どもを元気づけた。

 「現地の自由気ままな国民性や日本と全く違う価値観にも触れ、世界の広さを実感した」という笹木校長。帰国後、太陽神にあやかると共に、子どもたちに自身が感じたことを伝えようと「儀式」を始めた。

 帯広花園小時代から始め、これまで赴任した市内9校で披露。当初は歌わずに走ったり、ダンスを踊ったりしたことも。体育祭に向けて士気を上げる生徒に晴天をプレゼントする、校長の粋な計らいだ。

 25日、“最後の儀式”を通訳した遠藤さんは「うまくできてよかった。すごく歌がうまくて楽しい」、踊った石川さんは「リズムに合わせたら自然と体が動いた。1年生の頃はびっくりしたけど、歌もリズムも良い」と笑顔を見せた。

 笹木校長は「2人もいきなり本番でよくやってくれたし、生徒も手拍子で参加してくれた。(28日の本番は)必ず晴れます」と話していた。(松田亜弓)

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