素粒子物理学の魅力語る ノーベル賞受賞者の小林誠氏
ノーベル物理学賞受賞者の小林誠氏(高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授)を招いた帯広畜産大学の「リベラルアーツ講演会」が10日、帯広市民文化ホール・大ホールで開かれた。小林氏は素粒子物理学の魅力や宇宙の起源の謎などを語った。
帯広市、十勝毎日新聞社、市文化スポーツ振興財団の共催。講演会は学問へのモチベーションや幅広い教養(リベラルアーツ)を身に付けてもらおうと、同大新入学生を主な対象に初開催。地域住民らを含め約1300人が参加した。
小林氏は、物質を構成する粒子には、対応する反粒子(反物質)が存在すると説明。ただ、反粒子は粒子と出合うと対消滅し、天然には存在しない。粒子と反粒子の本質は同じ(CP対称)と考えられていたが、1964年に対称性の破れが見つかった。
小林氏はCP対称性の破れの仕組みを説明するため、73年に発表した「小林・益川理論」で当時3種類しか発見されていなかった素粒子「クォーク」が6種類ある可能性を主張した。この主張は正しいことが証明され、2008年にノーベル賞を受賞した。
さらに、宇宙が誕生した当時は粒子と反粒子が共存していたが、対消滅が進み、残った粒子だけで物質が構成されたと指摘。宇宙進化の過程で反物質が消滅した理由は謎で、「未知のCP対称性の破れのメカニズムが存在する。素粒子研究の大きな課題」と述べた。学生に対しては、「大学の専門分野は、勉強するべきことがほぼ無限にある」と呼び掛けた。
同大の奥田潔学長は「知的好奇心を高揚し、教養の大切さを再認識する機会になれば」と期待していた。