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台風10号の猛威 十勝に深い爪痕

◆まちをえぐる 清水
 ショベルカーで河川用地の修復作業が進むペケレベツ川。濁流の爪痕は今も深く刻まれたままだ(3日、塩原真撮影)

濁流の跡 空から
 台風10号による大雨災害が十勝を襲ってから、6日で1週間が経過した。住宅地の広範囲に浸水被害が発生した芽室や清水、新得では、増水した川の濁流が市街地に刻みつけた爪痕が上空から今もはっきり見て取れる。十勝と道央、道北を結ぶ道路や鉄路も復旧の見通しが立たないほどズタズタにされ、十勝の生産、物流現場にダメージが及びつつある。清水では依然として2人が行方不明で、濁流が残した大量の流木や土砂が捜索活動を難航させている。避難や断水など不自由な生活が続いているが、地域では一日も早い復旧に向けて歩みだしている。


◆神社橋仮復旧 新得
 たもとが崩落した神社橋は仮復旧を終え、かつてのように住民が行き来する光景が戻った(3日、塩原真撮影)

◆鉄路寸断 新得
 増水で崩落したJR根室線新得-十勝清水間の第1佐幌川橋梁(きょうりょう)(JR北海道提供)


◆生活直撃 清水
 断水によって水を賄えなくなった住民は、今も陸自による給水で急場をしのぐ生活を送っている(8月31日、塩原真撮影)

◆懸命の捜索 清水
 町旭山の久山川で行方不明者を捜索する道本機動隊員。大量に堆積した流木や土砂が捜索活動を阻む(5日、新井拓海撮影)


◆工場再開へ全力 芽室
 水が引いた日本罐詰構内では、汚泥処理が急ピッチで進められている(3日、塩原真撮影)

◆流木襲う 帯広
 札内川と戸蔦別川の合流点では堤防が決壊。太陽光パネルには流木が押し寄せ、大きな被害が出た(3日、塩原真撮影)




<台風10号災害の1週間>
■8月30~31日
 ◇帯広、新得、清水、芽室、中札内、音更、上士幌、鹿追に土砂災害警戒情報。

避難
 ◇十勝管内の13市町村で計67カ所の避難所が開設され、約5万世帯10万人を対象に避難勧告・指示が発令。避難者数は最大で7322人に。

救出
 ◇大雨によって各地の河川が増水。芽室川(芽室)やパンケシントク川(新得)、ペケレベツ川(清水)の氾濫で各町は住宅地で浸水被害。芽室では、腰の高さまで水に漬かった住宅地に取り残された住民も。消防署員や陸自隊員による救出活動も行われた。

 ◇管内全域で大雨となり、主要な国道や道道が冠水被害で相次ぎ通行止めに。JR根室線でも全列車が運転を見合わせた。この段階で関係機関は交通網への直接的な被害を確認できていなかった。

 ◇新得と清水、大樹の3町で、いずれも川の増水で壊れた橋のたもとから車が転落、計3人の行方不明者が出ていることが判明。

濁流
 ◇道が、河川氾濫など大きな被害が出た十勝の全市町村と上川管内南富良野町の計20市町村に災害救助法の適用を決定。


■9月1日
 ◇清水町内の国道38号・清見橋の壊れたたもとから車ごと川に転落し、行方不明になっていた同町内の男性(75)のワンボックスカーが、橋の下流約150メートルの地点で見つかる。

バスに行列
 ◇JR根室線の橋梁(きょうりょう)3基が流失し、すべての列車が運休。札幌と帯広を結ぶ特急の運行再開にめどが立たなくなった。一方、札幌行きの都市間バスに予約が殺到、増便対応する事態になった。

 ◇NTTドコモが新得、清水の両町役場に携帯電話の移動基地局車を配備。8月30日夜から利用できなくなっていた携帯電話の通話が部分的に解消した。

 ◇道東自動車道芽室インターチェンジ(IC)-占冠IC間で通行止めが解除に。また、国道274号日勝峠と国道38号狩勝峠の通行止めを受け、ネクスコ東日本北海道支社が音更帯広IC-占冠IC間で通行料を無料に。

ボランティア
 ◇ペケレベツ川が氾濫した清水町内では、清水中の生徒有志11人が市街地の道路にたまった泥を取り除くボランティア活動を繰り広げた。


■9月2日
死者・行方不明者4人
 ◇大樹町幸徳のヌビナイ川で、8月31日未明にヌビナイ橋の崩壊したたもとからRVごと転落した音更町内の男性(28)が遺体で見つかる。

 ◇新得町下佐幌・真心橋の上流で、8月31日未明に神社橋の崩落したたもとから車ごと転落した新得町内の男性(73)が遺体で見つかる。

 ◇清水町旭山地区のログハウスで暮らしていた同町内の男性(63)が、8月30日以降、連絡が取れなくなっていることが判明。近くの久山川が増水し、ログハウスごと流されたとみて警察などが捜索に着手。この時点で十勝の死者・行方不明者が4人に。

夜を徹し復旧
 ◇大雨の増水で一部が崩落して通行止めになっていた新得の神社橋が応急的に開通。宮坂建設工業(帯広)が1日から夜を徹して作業し、車や人の往来が再開した。

 ◇国道274号日勝峠で道路崩落や橋の流失が複数確認され、同38号でも崩落が発生。十勝と道央、道北を結ぶ幹線に大きなダメージが出た。

 ◇帯広測候所が8月の気象概況を発表。月間降水量は25観測地点のうち20地点で統計開始以来最多を記録。上士幌町ぬかびら源泉郷では平年の5倍の978ミリに。


■9月3日
国交相視察
 ◇石井啓一国土交通大臣が被害が深刻な清水、新得両町を視察。「まずは被害調査を迅速にやる必要がある。その状況を見て判断することになる」と激甚災害指定の可能性について言及。

 ◇JR北海道の島田修社長は、石勝線の特急列車運休を受け、「早ければ来週中にもトマム-帯広間で代替バス運行を始めたい」と発言。

土砂撤去
 ◇芽室川の氾濫で芽室公園西側の市街地が浸水した芽室で、町が募った災害支援ボランティアが活動を開始。62人が住宅敷地内の汚泥処理に携わった。幕別町でも猿別川河川敷で、ボランティア9人がパークゴルフ場に堆積した土砂の撤去に汗を流した。


■9月4日
通学再開
 ◇JR北海道が帯広発釧路行き普通列車の運行再開。5日には池田高校の列車通学生が6日ぶりに登校。

 ◇清水町旭山の久山川で、行方不明になっている同町内の男性(63)の軽トラックを発見。

 ◇高橋はるみ知事が新得町を視察。町内の男性1人が犠牲になった神社橋で献花した。

仮設で入浴
 ◇陸自第5旅団(司令部帯広)は断水が続いている新得町に仮設の入浴施設を設置。


■9月5日
 ◇大雨による浸水で、中札内村内の中札内若どり関連鶏舎11棟で飼養されていた7万羽が死んでいたことが判明。

 ◇松本純内閣府特命担当大臣(防災)を団長とする政府調査団が十勝入り。高橋はるみ知事らと意見交換し、「激甚災害」の指定を求める緊急要望を受ける。

 ◇芽室町の芽室川河川敷で、清水町内の農家所有とみられる牛1頭が見つかり、救出作戦が行われる。


◆関連写真
台風10号 各地の爪痕-十勝毎日新聞電子版

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