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安保、核拡散 不安の声 トランプ氏勝利 十勝も「驚き」

アメリカ大統領選のテレビ中継を見守る帯広市民(9日午後4時50分ごろ、帯広市内のハラデンキ本店で。金野和彦撮影)

 米大統領選でのトランプ氏勝利は、十勝関係者にも驚きをもたらした。政治経験がなく、安全保障や外交問題などで過激な発言を繰り返したトランプ氏について、不安と期待が渦巻いている。(池谷智仁、安倍諒、藤島諒司)

 トランプ氏は在日米軍駐留経費の負担増を求めるなどの発言を行っており、日米関係への影響を懸念する声が出ている。

 自衛隊OB隊友会道東連合会十勝地区支部協議会の宮内隆一会長(72)は「『世界の警察をやめる』と話した通りに在日米軍が撤退となれば、(アジアで)中国の存在感が増しさらに混乱を招く。米国の後ろ盾がなくなれば、日本は自分の身は自分で守らなければならず、自衛隊も大きく変わらざるを得ない」と危惧する。

 日本の核武装を容認する発言もしていることから、平和運動関係者も動向を見守っている。原水爆禁止帯広協議会の藤岡博史理事長(69)は「外交事情を理解して発言していたのか真意が分からず、慎重に見極めたい」とする。5月にオバマ氏が米大統領として初めて被爆地・広島を訪れたことに触れ、「引き続き、核兵器のない世界を実現する方向に歩んでほしい」と訴える。

 帯広市の姉妹都市・米マディソン市と交流する帯広マディソン交流協会の讃岐武史会長は「市民の交流なので影響は考えにくい。今後も友情を深め、良好な関係をつくることに努めるだけ」と話している。



「移民政策が心配」 米マディソン市在住・新井さん
 米国ウィスコンシン州マディソン市在住で、8月に帯広市訪問団の通訳を務めた新井正美さんは「街全体がショックを受け、暗い雰囲気に包まれている」と戸惑いを語る。同市は革新性の高い気質で「政治経験豊かなヒラリー氏が負けたことは予想外で、怒りを通り越して悲しさをもって受け止められている」という。

 新井さんは「娘の通う高校では、ヒスパニック系の校長が全校放送で『他人を侮辱する人が大統領なんて』と泣きながら話したようだ。娘もヒラリー氏への投票を呼び掛ける女性団体に参加していたのでめげていた様子だった」と話す。また、マディソン市は移民の多い街としても知られるが、「移民が送り返されたりしないか心配」とする。

 帯広市との交流の原点でもある精神保健分野に関し、トランプ氏が医療保険制度改革(オバマケア)廃止を訴えていることに触れ、「精神保健関係者への影響が懸念される。治療を続けることが難しくなる患者も出てくるかもしれない」と不安視。姉妹都市交流については「あくまでも民間交流なので影響はないと思う」とした。



政治に不満を持つ国民が多かったと分析するキャンベル氏

政治へ不満 隠れていた帯畜大講師・キャンベル氏
 アメリカ国籍を持つ帯広畜産大講師のデビッド・キャンベルさん(59)は、医療保険制度「オバマケア」など現在の政治に不満を持つ国民が多かったと分析する。トランプ氏圧勝に驚きつつも、世論調査では表れなかった“隠れトランプ支持者”が相当数いたとみている。

 クリントン氏はメール問題やTPP対応が途中でぶれるなど、「信頼できなかったのが一番の問題」と指摘。夫が大統領経験者で、世襲を嫌う有権者も多かったとみる。

 その上で、「オバマケア」導入で医療費が高くなり、撤廃を求めたトランプ氏の支持が広がったと解説。現状の政治を変えたい有権者には、政治経験なしはマイナスにならなかったとする。

 移民政策や安全保障などで過激な発言を繰り返したトランプ氏だが、終盤は発言を控えた。「他の政治家とは違うのだとインパクトを出す戦略。ビジネス交渉のように、政策は現実に近づけてくるだろう」と予測する。日米関係は同盟関係にあることから、大きな変化はないとみている。

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