病気の子供にウィッグを 市内の美容室利用者が髪の寄付に協力
病気や交通事故などで髪を失った子供たちに医療用ウィッグ(かつら)を-。帯広市内の美容室「アームズ」(帯広市大通南14、高根淳オーナー)は希望する利用客の髪を、ウィッグの無償提供に取り組む大阪のNPOに寄付している。髪の寄付(ヘアドネーション)の認知度は低く、ウィッグ製作にも費用がかかるため、管内唯一の賛同美容室の同店は「髪や費用の寄付を通して、支援の輪が広がれば」(高根さん)と話している。
「切った髪を困っている人に寄付したい」。5年前に当時小学5年生だった女子常連客の一言がきっかけだった。当時は店のスタッフもヘアドネーションへの協力方法を知らず、女子児童の要望に応えるために調べて、NPO「ジャパンヘアドネーション&チャリティー」(JHDAC)の活動を知った。
その後、同店ではヘアドネーション用のカットの受け付けを開始。市内の団体職員笹倉弥宵さん(23)は昨年12月、寄付するために伸ばした髪を切った。「毎回切っても10センチ程度。切った髪を捨ててしまうのであれば、伸ばして寄付しようと思った」という。同店では寄付への協力を始めてから、約50人の髪をJHDACに送った。
同店が髪を送るJHDACは大阪の美容師有志が社会貢献を目的に設立。「NPO法人としてヘアドネーションを行うのは全国唯一」(渡辺貴一事務局長)という。設立後4年で18歳未満の希望者に25個のウィッグを無償で提供してきた。道内でも札幌の美容室を通じて9個のウィッグが希望者の元に届けられた。
髪の提供者は全国から延べ6000人に上る。しかし、1個のウィッグが出来上がるには数十人の髪が必要で、製作には1個当たり10万円の費用がかかる。髪の長さは31センチ以上が基準だが、「今は51センチ以上の髪が足りない」(同)。
JHDACによると、現在も約30人がウィッグの提供を希望している。ヘアドネーションの普及に伴い、アームズをはじめ、活動に賛同する美容室では昨年末から募金活動も始まった。渡辺事務局長は「目標はウィッグを“必要としない”社会。髪がないことも個性として受け入れられる世の中にしたい」と活動への理解を求める。
アームズでは髪の寄付に協力した人には頭皮をマッサージする炭酸泉(約10分)をサービスする。問い合わせは同店(0120・97・0213)へ。(深津慶太)