「おっぱい」の進化 本に 帯畜大の浦島教授と福田准教授
哺乳類の成分変化を探る
帯広畜産大学の浦島匡教授(59)と福田健二准教授(44)らは、哺乳類の乳(ミルク)の歴史や謎に迫る「おっぱいの進化史」を出版した。最新の研究成果を交え、乳成分の変化などから哺乳類の進化を探っている。
哺乳類の最大の特徴は「おっぱい」(乳汁と乳房)で、その起源の解明は生物学上からも重要なテーマとし、一般の人にも分かりやすく解説した。
乳には、たんぱく質や脂質、ビタミンなどの栄養成分の他、感染防御成分などが含まれている。この機能により生存率が高まり、哺乳類は繁栄した。
人間を含む多くの哺乳類の乳成分は、重要な栄養源となる乳糖の割合が高い。ただ、原始的な哺乳類とされる単孔類(カモノハシなど)は、ミルクオリゴ糖の割合が大きくなっている。これは、乳首のない単孔類は乳腺から乳を分泌するため細菌繁殖の危険が高く、赤ちゃんへの病原性細菌やウイルス感染を防ぐ役割があるミルクオリゴ糖を優先したと考えられる。
その後、哺乳類が乳首を通して授乳するようになり、乳の役割が感染予防から栄養重視に進化したとみられることなどを紹介している。
ミルク科学が専門の浦島氏は「乳成分の変化は環境への適応戦略」と強調する。例えばクマの乳は脂肪分の割合が高く、乳糖が少ない。これは冬眠中に出産するクマの生態に合わせ、ため込んだ皮下脂肪から乳に脂肪を移して与えているためとしている。
同書では他にも、乳に含まれるさまざまな成分や乳酸菌などの話題を提供。乳たんぱく質化学が専門の福田氏は「乳の進化には乳酸菌などの腸内細菌との共生も大きく関係している。興味を持ってもらえれば」と話している。
同書は帝京科学大の並木美砂子教授も執筆した。発行は技術評論社。税別1880円。(池谷智仁)