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JR北海道石勝線脱線火災事故3年 「北の鉄路」再生へ道半ば

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 【札幌】特急「スーパーおおぞら」の乗客ら79人が負傷したJR石勝線の脱線炎上事故から27日で3年。この間、JR北海道では貨物列車の脱線事故に端を発するレール幅検査データの異常放置や改ざんなど、安全の根幹を揺るがす問題が次々に発覚し、「会社存亡の危機的状況」(同社)が続いている。経営陣が刷新された新年度に入っても車両故障などのトラブルが起きており、「トンネルの先」はまだ見えない。「北の鉄路」の安全を最優先する企業風土の構築に向けた模索が続いている。

 札幌市東区にあるJR北の社員研修センター。部分展示された事故車両「キハ283-9」が、焼け焦げた無残な姿をさらし、社員らの記憶の風化を強烈に押しとどめる。全社員対象に行われている研修で活用されているが、広報担当者は「終了後も現状のまま(保存される)になるのでは」と話す。

 昨年春から展示されているこの車両は、同社にまん延した「病巣」が行き着いた先でもある。同社は石勝線の事故後、2012年に安全基本計画を策定したが、昨年春以降も特急列車の相次ぐ出火や社員の不祥事など、さまざまなトラブルが顕在化。

 函館保線管理室を含む9部署で判明したレール計測データの改ざん問題では、国交省から監督命令と事業改善命令を受ける事態に至った。また、現場社員からの聞き取り調査では業務量の過多や要員・予算不足、技術レベルの低下など、問題の背景の一端が浮き彫りとなった。

 ただ、再生に向けた取り組みも進み始めている。昨年11月に行った特急の減速・減便を伴うダイヤ改正は利用客に大きな不便を生じさせたが、同社にとっては安全重視に基づく経営方針の大転換でもある。新体制ではJR東日本から人材を迎え入れ、今年度は木製レール枕木のコンクリート化など安全投資のために過去最大の予算を計上した。今月10日に同社を訪れた太田昭宏国交相は「ホームランの一発逆転ではなく、フォアボールでもデッドボールでも一塁を目指せ」と檄(げき)を飛ばした。

 島田修社長は5月の会見で「安全最優先の企業風土を根付かせることや安全のための基本動作の徹底はまだ道半ば」と「評価」。労組対応など課題も山積するが、島田社長は「信頼回復、安全第一の企業を作り上げ、北海道の鉄道としての使命を果たしていく」と話している。(犬飼裕一)

<JR石勝線特急脱線炎上事故>
 2011年5月27日午後9時55分ごろ、上川管内占冠村の第1ニニウトンネル内で、釧路発札幌行き特急スーパーおおぞら14号が脱線、炎上し、乗員・乗客252人のうち、煙を吸うなどして79人が軽傷を負った。運輸安全委員会は13年5月、車輪表面の剥離などで起きた上下振動で車体から部品が落ち、脱線や燃料タンクの破損が生じたとする調査報告書を公表した。一方、道警は業務上過失致傷容疑で現在も捜査を続けている。

 


◆JR北海道石勝線脱線火災事故とは
特急列車、トンネル内で火災事故 240人避難-十勝毎日新聞電子版(2011/05/28)
JR石勝線事故 車両部品の脱落が脱線原因か-十勝毎日新聞電子版(2011/05/29)

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