ハイモイスチャーシェルドコーン給与で 黒毛和牛肥育の飼料自給率アップ
道総研 畜産試験場 肉牛研究部 肉牛グループ
１．試験のねらい
ハイモイスチャーシェルドコーン（HMSC）は、飼料用トウモロコシの子実のみを収穫調製した自給濃厚飼料であり、輸入トウモロコシとの代替により飼料自給率向上が期待されている。黒毛和種肥育では、給与飼料に占める濃厚飼料の割合が高く、給与期間も長期間となるため、デンプン含量の高い HMSC を最大限活用した肥育技術を開発し、飼料自給率アップに資する。
２．試験の方法
１）試験１：黒毛和種肥育において配合飼料、フスマおよび大豆粕に HMSC 混合給与（試験区）が飼料摂取量や発育、産肉成績に及ぼす影響を慣行の育成・肥育（対照区）と比較した。試験区の肥育期別の HMSC割合を肥育前期20%、中期18%、後期10% とし（表１）、濃厚飼料中のデンプン含量を肥育前期45.2%、中期43.2%、後期41.9% とした（表２）。
２）試験２：黒毛和種肥育においてトウモロコシサイレージを飽食給与とし、配合飼料および大豆粕にHMSC 混合給与（CS 区）が、飼料摂取量や発育、産肉成績に及ぼす影響を慣行の育成・肥育（対照区）と比較した。CS 区の肥育期別の HMSC 割合を肥育前期20％、中期22％、後期22％とし（表１）、濃厚飼料中のデンプン含量を肥育前期45.1%、中期45.7%、後期45.7% とした（表２）。
３．成果の概要
１）試験１：試験区の乾物摂取量は肥育後期で8.6kg/ 日と対照区の9.5kg/ 日より低い傾向にあったが、日増体に有意な差は認められなかった（表３）。28ヵ月齢出荷時体重は試験区が754kg、対照区が750kg と有意な差は認められなかった（表４）。第一胃内容液では、pH および酢酸 / プロピオン酸比に HMSC 由来デンプンの影響は認められなかった。
２）試験１：枝肉重量は対照区が482kg、試験区が483kg と両区に有意な差は認めらなかった（表４）。胸最長筋面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さおよび BMS No. についても処理区間に有意な差は認められなかった。肥育期間中に HMSC は乾物で657kg 給与可能であった。TDN 自給率は対照区の11.0% に対して、試験区は26.5%（乾草・麦稈由来10.8%、HMSC 由来15.7%）となり、15ポイントの向上が期待できる。
３）試験２：CS 区の乾物摂取量は対照区の乾物摂取量と大きな差はなく、日増体にも有意な差は認められなかった（表３）。出荷時体重は CS 区が783kg、対照区が770kg と有意な差は認められなかった。第一胃内容液では、pH については両区とも6.0を下回らず推移した。肥育中期・後期の CS 区の酢酸 / プロピオン酸比は対照区より高く、CS 多給による効果が確認された。
４）試験２：枝肉重量は対照区が505kg、CS 区が515kg と両区に有意な差は認めらなかった（表４）。胸最長筋面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さおよび BMS No. についても処理区間に有意な差は認められなかった。肥育期間中に HMSC は乾物で605kg 給与可能であった。TDN 自給率は対照区の11.2% に対して CS 区は51.7%（CS 由来36.8%、HMSC 由来14.9%）となり、40ポイント向上が期待できる。
＊肥育前期10-14ヵ月齢、中期15-23ヵ月齢、後期24-28ヵ月齢 *a,b：異文字間に有意差あり（P<0.05）
４．留意点
１）HMSC 給与時は、大豆粕等蛋白質源を加えて CP 含量を調節する。
２）HMSC 給与時は、夏季の二次発酵や飼槽中の残飼の腐敗に注意する。
用語説明
＊１HMSC（ハイモイスチャーシェルドコーン）：完熟期のトウモロコシ子実を未乾燥で粉砕後、密封梱包し調製したもの。本試験では、安平町の農業法人で調製したサイレージを供試した。
＊２酢酸 / プロピオン酸比：第一胃内発酵パターンを示す指標、３以上は酢酸優勢型発酵、２以下はプロピオン酸優勢型発酵
デンプン多給時にプロピオン酸優勢となりやすい。参照元：日本飼養標準肉用牛2008、P93
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