多収で加工適性に優れる!中生金時「十育B81号」
十勝農業試験場 研究部 豆類グループ
1.背 景
北海道における金時類は、6,260 ha(平成27年)の栽培面積があり、早生で良質な「大正金時」(約46%)と多収で大粒の「福勝」(約31%)の2つの早生金時品種がその大部分を占めている。金時類は豆類の中でも成熟期が早いことから、秋まき小麦の前作物として栽培されるなど、輪作体系上重要な作物である。また、実需者からは、煮豆や甘納豆用として品質の良さが高く評価されており、生産と価格の安定化が常に求められている。しかし近年、成熟期前後における高温条件下での降雨により、色流れ粒、発芽粒、腐敗粒等の降雨被害が発生し、生産が不安定となることで実需者への供給量不足が問題となっている。加えて、品質劣化に伴う販売価格下落による収益性の低下が、生産者の作付意欲減退につながっている。
現在の早生金時品種は、標準播種期(5月下旬)では、品種間の熟期が近接するために、成熟期前後の短期間の降雨で、深刻な被害を受けている。一方、色流れ対策として、晩播による熟期分散が一部で行われているが、減収のリスクも懸念される。また、早生金時品種の中で「福勝」は、煮熟後の皮切れや煮くずれ発生の多さが、一部実需者から指摘されている。これら課題の解決に向け、早生金時品種と異なる中生の、収量性と加工適性が向上した金時品種が強く要望されてきた。
2.育成経過
多収で大粒良質の金時類品種の育成を目標とし、平成16年に十勝農業試験場において、いずれも「福勝」に比べやや晩生で多収、大粒良質の金時育成系統「十育B71号」を母、「十系B352号」を父として、冬期に温室での人工交配を行った。以降選抜、固定を図り育成した。
3.特性の概要
「十育B81号」は多収で、成熟期が「福勝」に比べ3日程度、「大正金時」に比べ7日程度遅く、これら早生金時品種との熟期分散により降雨被害発生の低減が期待出来る。また、煮熟後の皮切れや煮くずれの発生が「福勝」よりも少なく、同等以上の加工適性を有する。「福勝」と比較して、粒形、粒大および粒色も同等であるため、同じ大正金時銘柄での流通が可能である。
4.普及態度
中生金時品種「十育B81号」を「福勝」の大部分(秋まき小麦前作での栽培が困難である一部地域を除く)に置き換えて普及することで、収量性の向上および早生金時品種との熟期分散による雨害リスク軽減が図られ、良質な北海道産金時類の安定供給に寄与できる。
1)普及見込み地帯:北海道のいんげんまめ作付け地帯
2)普及見込み面積:1,600ha
3)栽培上の注意事項:
(1)「福勝」と同様に大粒であるので、収穫・乾燥条件に留意し、損傷粒の発生を防ぐ。
(2)インゲンマメ黄化病抵抗性は“やや弱”のため、適切な防除に努める。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp