十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

氷なしでもシャキッと新鮮!ブロッコリーの低コスト流通法

花・野菜技術センター 研究部 生産環境グループ
中央農業試験場 作物開発部 農産品質グループ
ホクレン農業協同組合連合会 農業総合研究所


1.背景と目的
 ブロッコリーは生産量の30%が道外に移出される北海道の重要な移出野菜である。現在ほとんどが氷詰め発泡スチロール箱で流通されており、1箱に5kg以上の氷が充填されるため、輸送コストがかかるほか、製氷施設が産地の生産・移出量を制限する一因ともなっている。そこで、野菜の鮮度保持効果を有するMA包装フィルムによる、ブロッコリーに対する鮮度保持効果(異臭・腐敗、色調の変化等を指標)と、低コスト流通法を明らかとした。
【用語解説】MA(ModifiedAtmosphere)包装フィルム
 一般的なフィルムでは包装内が酸欠になり、好ましくない変化が起こる。MA包装フィルムはフィルムに開けた微孔から外気とのガス交換を行い、包装内を適度な低酸素・高二酸化炭素状態に保ち、青果物を休眠状態にすることで鮮度を保持する。

2.試験方法
1)定温保管庫でのモデル試験(蔵置試験)
   資材;MAフィルム2種類、ポリエチレンフィルム(以下PE)、氷詰め発泡スチロール箱(対照、以下氷詰め)、無包装。作期;8月下旬収穫(夏品)、9月下旬収穫(秋品)。保存温度;3~20℃、調査日;入庫後2~50日目まで適宜、調査項目;萎れ、異臭、腐敗、色調、アスコルビン酸、ガス濃度(酸素、二酸化炭素)、食味。
2)輸送試験
  道内5産地から7か所へ延べ8回輸送、調査項目;前項と同じ、温度(箱外表面)

3.成果の概要
1 )3℃~15℃での蔵置試験の全ての事例でMAフィルム包装の鮮度保持日数がPEおよび氷詰めと同等または長く、MAフィルムによる鮮度保持効果は明らかであった(データ略)。
2 )蔵置試験にて国内輸送で想定される5日以内に10℃以下で鮮度劣化の発生した事例はなかったことから、10℃以下では5日以内に鮮度劣化は発生しないと考えられた。5日以内の鮮度劣化は10℃以上の温度の積算(10℃以上積算温度(℃・時間)=Σ(1時間の平均温度-10))が関わっていると推察された。蔵置試験で鮮度劣化を認めなかった最も高い10℃以上積算温度は240℃・時間、鮮度劣化を認めた最も低い10℃以上積算温度は360℃・時間であった(表1)。
3 )輸送試験において、流通行程中の平均温度は6.7~17.9℃で、10℃以上の温度に長時間暴露されるケースが見られた。このうち、2回の輸送においてMAフィルム包装で鮮度劣化がみられ、この時の10℃以上積算温度は474℃・時間および315℃・時間であった。鮮度劣化が認められなかった最も高い10℃以上積算温度は293℃・時間であった(図1)。
4 )以上より10℃以上積算温度が300℃・時間を超えると鮮度劣化発生の可能性が高くなると推察した(表1、図1)。
5)輸送後の食味官能評価でMAフィルム包装は氷詰めと同等以上と評価された(表2)。
6 )氷詰めに替えてMAフィルムを用いた場合、包材費・運搬費の合計を25~33%程度低減できると試算された(表3)。なお、重量は一箱あたり5~10kg程度軽減される。
7 )国内流通おけるMAフィルムの使用は従来の氷詰め発泡箱と比べ、鮮度および食味では同程度、経費面では優ると考えられた。なお、使用に当たっては10℃以下の低温に管理する。10℃以上の温度は鮮度に影響を与え、10℃以上積算温度が300℃・時間を超えると鮮度劣化する可能性がある(表4)。

4.成果の活用面と留意点
1)本成果では産地から支場または販売店までの輸送・保管の行程を流通と表現した。
2)本成果は、氷詰め発泡スチロール箱に替えてMA包装フィルムを用いたブロッコリーの流通に使用する。
3)10℃以下の低温管理が守られるブロッコリー国内流通(5日程度までを目安)で使用する。
4)MAフィルムは内容量に応じたブロッコリー用を用い、密封して使用する。
5)予冷は従来(氷詰め)同様に、収穫後速やかに行う。







詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

更新情報

「愛好者の裾野広げたい」 ワインの量り売り開始 専門店「ル・ブルー」 中札内

紙面イメージ

紙面イメージ

4.27(土)の紙面

ダウンロード一括(66MB) WEBビューア新機能・操作性UP

日別記事一覧

十勝の市町村

Facebookページ

記事アクセスランキング

  • 昨日
  • 週間
  • 月間

十勝毎日新聞電子版HOME