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及川佑の目「高木美帆『理想的なスケーティング』 北京五輪スピードスケート女子1000メート」

 高木美帆選手は5種目目(パシュート予選・準決勝を含めると7レース目)という、信じられないくらいのハードスケジュールでのレースでしたが、ここにピークを持ってきたのではないかと思うぐらいの圧巻なレース内容だったと思います。

 異なる種目をこなし、蓄積された疲労の中でレースをすることは少なからず本来のリズムを崩し、いつもより大きく滑ろうと蹴りが大きくなって余計な力を使ってしまうこともあります。ですが、さすが美帆選手でしたね。確固たる自信とそれを裏付ける今までのトレーニングがしっかり身体をコントロールしてくれたのだと思います。

 スタートして最初のコーナーを駆け抜けて200メートルを通過した瞬間、安定したスピードの乗せ方にこれは素晴らしいタイムが出ると感じました。今大会、そして今回の1000メートルで特に良かったのは、コーナリングで遠心力を感じさせない体幹の強さと骨盤のブレの無さ。両肩と左右の腰がそれぞれ斜めに落ちることなくずっと平行のままのはずです。現在のスケーティングでは理想的な身体の運びだと思います。

 小平奈緒選手はスタートに大きなミスはなかったですが、500メートルでのスタートミスもあったため、そのことが多少頭には残っていたように感じました。あまり攻めるスタートはできなかったのでしょう。やや上体が浮いてしまったように見えました。ただ、その後は大きな失敗もなくきょう出せる力をしっかり出した素晴らしいレースだったと思います。500メートルの時もそうでしたが、ストレートの滑りを見ていて左右への動きがいつもより小さく見え、スピードが乗せきれていないなと感じていました。レース1カ月前にけがをしていたと知って納得しました。本人はタイムや順位には不本意だったでしょうが、小平選手の努力やスケートに対する姿勢は、たくさんの選手に影響をもたらしてくれたと思います。(及川佑=トリノ五輪500メートル4位)

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